みなさまこんにちは。

私の頭もぐるぐるまわっています。いったいいつまでまわり続けるのでしょうか。

さて、この度2014年9月1日付で改正道路交通法が施行されまして、日本でも環状交差点、通称「ラウンドアバウト」の通行方法が正式に定められました。

私もラウンドアバウトについては個人的に気になっていましたのでまとめてみました。長くなりますがご興味ある方のご参考になれば幸いです。

ラウンドアバウトとは
ラウンドアバウトとは、交差する道路同士を環道とよばれる円形の道路で接続する交差点です。環道の中心には中央島と呼ばれる分離帯があって、進入した車両は中央島の周りをぐるぐるとまわりながら自分の行きたい方向に退出します。

2014-09-08-13-35-29

- image:国土交通省 -

昨年長野県の軽井沢で設置されたりしてマスコミの話題になっていたのですが、ようやく本格的に導入できる体制が整いました。なぜイギリスを中心とした海外にはあって日本にはなかったんだろうと思っていたのですが、その理由は法律がなかったからなんですね。

円形の交差点自体は、イギリスの温泉地バースやパリの凱旋門広場、ニューヨークなどに100年以上前から存在していたのですが、これらの円形交差点の目的は、交通整理ではなく広場の景観を美しく保つためであったそうです。

環道内を一方通行かつ優先通行とする現在のルールのラウンドアバウトが整備されはじめたのは1960年代のイギリスです。その後欧州各国やアメリカなどに普及し、現在に至ります。各国のラウンドアバウトの数はフランスが最大で30,000以上、イギリスに25,000、アメリカには4,000近くのラウンドアバウトが存在するそうです。

"They have been successfully used to control traffic speeds in residential neighborhoods and are accepted as one of the safest types of intersection design."
RoundaboutsUSA

"It's amazing how productive it can be to go in circles."
Chris's British Road Directory


私はラウンドアバウトが生まれた背景は「馬車は交差点で急停止できないため、馬車を停めずに交通を交差させる方法として編み出された」と思っていました。というかそんなエピソードをどこかで読んだことがあるような気がしていたのですが、今回改めて調べた限りでは、信頼できそうなソースからはそのような話は見つかりませんでした。

ということで、1960年代のモータリゼーションの発展よって安全で効率的な交通整理の方法が課題となっていたイギリスで、以前から存在していた環状交差点を再発明したものがラウンドアバウト、ということのようです。

なお、今回の法改正で「日本でも信号機がなくなる?」なんて煽り気味の記事も散見されますが、ラウンドアバウトを「発明」した当のイギリスでも大多数の交差点は通常の十字型です。交通量の多い交差点は当然信号機が設置されていますので、信号機がなくなることはありえませんね。

ラウンドアバウトの基本
私自身はイギリスに2回ほど行って各地をレンタカーで走りました。イギリスにはそこかしこにラウンドアバウトがありましたが、あれはいいものですよ。ラウンドアバウトは、左側通行の英国の場合、基本的なルールは下記の2点だけです。

1.ラウンドアバウト内は時計回りに走行する。
2.ラウンドアバウト内を走行する車両が交差点に流入する車両よりも優先される。

ザッツオール。シンプルです。実際にこれだけで機能します。

自分の運転する車がラウンドアバウトにさしかかったとき、すでに環道内を走行する車がいれば、その車が抜けるまで待ちます。もちろん、自分の進路に来ないことが明らかならば、ガンガン進入して構いません。環道内に誰もいなければ一時停止も不要で、そのまま進入して自分の好きな方向に出ればOKです。

ラウンドアバウトはシンプルで無駄のないことこの上ない交通システムで、実際に走ってみても、実にわかりやすく快適に走行できます。

なぜいま日本で?
さて、日本でも本格的に導入が進みそうなラウンドアバウト、警察庁によると2014年9月1日時点で全国に34箇所。法整備前の円形交差点を含めても、2013年9月の時点でわずか140箇所にとどまっています。

しかし、国土交通省の検討委員会が設置されるなど、政府も本腰を入れて整備に取り組んで行くようですから、今後は全国に広がっていくのかと思います。
わが国の道路特性や交通状況等を踏まえつつ、ラウンドアバウトの整備が相応しい交差点の特性など、ラウンドアバウトの整備における技術的な課題について専門的見地から審議を行ため、「ラウンドアバウト検討委員会」を設置する。
国土交通省 ラウンドアバウト検討委員会設立趣旨

わが国では、ラウンドアバウトの設置例がきわめて少なく、その通行方法が一般に認知されていないことから、比較的通行方法がわかりやすい「中央島の乗り上げを前提としない1車線のラウンドアバウト」を本委員会の検討対象とする。
国土交通省 ラウンドアバウトの現状


日本で今になってラウンドアバウトの導入が進む背景ってなんでしょう。まず、道路インフラの安全性を向上させて交通事故を減らすことは、大前提としてあるかと思います。また、人口減少によって自治体の、信号機や交通整理などの費用を削減して交通インフラのコスト削減を図るという目的もあります。

例えば兵庫県では、高齢化と人口減少によって必要性が薄れた信号機であっても、地元の反対もあって撤去は難しいそうです。そういった場所でも、ラウンドアバウトを設置すれば、安全性を向上させながらコストダウンも図れますので、地元の理解も得られやすいかもしれません。

「当局の答弁としては、撤去の提案をしても、地元了解が得られないケースがほとんどで、撤去実績はない。」
兵庫県議会議員 みと政和


また、新規の道路建設がそれほど見込めないなか、地域振興のために公共事業を確保したいといういろいろな方面の思惑もあるのかもしれません。

ラウンドアバウトのメリット
さて、ラウンドアバウトのメリットは下記くらいでしょうか。

・交差点への進入速度が抑えられるため事故のリスクを減らせる。
・直進車と右折車が衝突する「右直事故」がなくなる。
・信号機の設置・維持費用がかからない。
・赤信号で停止したのに交差車両が誰も来ないという無駄(信号機の無駄、ガソリン代の無駄、時間の無駄)がない。
・多叉路交差(5枝・6枝など)での複雑な信号機の制御が不要。
・Uターンがラク。
・停電時の交通整理が不要。

まず安全性について。米国の調査では、ラウンドアバウトの交差点では事故による死者が9割も減ったという調査結果もあります。また、日本のラウンドアバウトでは必ず左折で進入して左折で退出しますので、「右折」というものが無くなります。そのため、自動車同士の事故の約10%を占める右折事故(警察庁「平成25年中の交通事故の発生状況」)はラウンドアバウトでは起こり得ません。

More than 90% reduction in fatalities
76% reduction in injuries
35% reduction in all crashes
Slower speeds are generally safer for pedestrians
米国連邦道路庁


また、信号機の設置費用は1交差点あたり300〜500万円、メンテナンス費用は1基あたり年間7万円かかる(先述のみと議員ブログ)ということですから、ラウンドアバウトでこれが不要になるのは大きいですね。

「交通信号機1基(1交差点)あたりの標準設置費用は、通常の定周期信号機が約470万円、押しボタン式信号機約270万円、一灯式信号機は約100万円」
秋田県警


信号待ちがないというのも気持ちいいですよ。イギリスだと夜間は本当にスイスイ走れますからね。よそ見して中央島に突っ込まないように気をつけなければなりませんが。

ラウンドアバウトのデメリット
さて、いいことずくめに聞こえるラウンドアバウトにも、いくつかのデメリットがあります。

・交通量が容量を超えると機能しなくなる
・十字型交差点よりも広い敷地が必要
・側面衝突のリスクが増える
・交差点での判断が自己責任によるところが大きい
・災害時に渋滞が起きないかどうかはひとえに交通量による

ラウンドアバウトでは環道内の車両が優先されます。そのため、環道が車でいっぱいになってしまうと、流入車両はいつまでたっても進入できずに渋滞が発生します。

そのためロンドンなどの大都市では、ラウンドアバウトの中に信号機を設置して制御したり、流入車両を減らすためにバイパスを設けたりしています。バイパスというのは、例えば環道の外側に、南側から西側へ抜ける側道を作ってしまうんですね。こうなるともはやラウンドアバウトとは呼べません。

また、大都市の幹線道路では環道が複数車線になっていて、進路変更のためにせわしなく車線変更する必要があるため、信号式交差点よりも危険です。日本でいえば首都高の箱崎ジャンクションのように、合流と分流が複雑に絡み合うカオティックな状況です。

このことから、国土交通省の委員会では、国内のラウンドアバウトは当面1車線を想定するそうです。

また、敷地に関しては、大型車を通すことなどを考えると、十字型交差点よりも広い敷地が必要になりますので、既存の市街地に設置するのはなかなか難しそうです。

また、右直事故がなくなるかわりに、ラウンドアバウトを周回する車両の側面に進入車両が衝突するリスクも指摘されています。

さらに、信号機がないため、交差点内での判断が自己責任に委ねられます。環道の車が多い時は思い切って入らなければなりません。イギリスだと「ぶつからなければOK」みたいな感じでガンガン入っていきますが、彼の地に比べれば相当穏和な交通マナーの日本でどこまで馴染むかは気になります。

また、災害時に有効ではというのはどうなんでしょう。停電が関係ないのは事実ですが、ラウンドアバウトに避難車両が殺到すれば結局動けなくなりますので、ラウンドアバウトだから避難しやすいかというと、そう単純な話ではないのかなと思います。

ということで、ラウンドアバウトが手放しで従来の交差点よりも安全だとは言えないのですが、この辺りは運用によっても変わってくると思いますので、実証結果を見守りたいと思います。

いろいろ書きましたが、私はラウンドアバウトの導入には賛成です。この低成長時代ですから、無駄な信号機はどんどん減らして、身軽な交通インフラを実現して頂きたいものです。

バーチャルツアーへようこそ
最後に、イギリス各地のラウンドアバウトのバーチャルツアーをやってみましょう。

一般的なラウンドアバウト。日本で整備が進められるのはこのタイプです。中央島が緑地帯になっているとおしゃれですね。

大きな地図で見る

幹線道路は複数車線のラウンドアバウトが多いです。環状路内には車線は引かれていない場合もあります。

大きな地図で見る

大きなラウンドアバウト。中央島が林になっていて、対岸は見えません。あ、左側にプジョーディーラーがありますね。今回唯一のフランス車ネタです。

大きな地図で見る

都市部の複雑なラウンドアバウト。路面や看板の標識を見ながら車線変更します。日本の大都市で普通に運転できる人なら問題ありません。

大きな地図で見る

大きな地図で見る

中央島がペイントのミニラウンドアバウト。これ、要りますかね?

大きな地図で見る

最後に、世界で最も複雑と言われるイギリスのスウィンドンにある「マジックラウンドアバウト」をご紹介します。イギリス人のラウンドアバウト熱がこじれるとこうなります。

こちらです。

大きな地図で見る


大きな地図で見る

もう、なんというか、イギリスのコメディ映画を交差点で再表現してみたって感じですよね。「銀河ヒッチハイク・ガイド」「Mr.ビーン」私は好きですけどね。

こんなラウンドアバウトは日本にはできないでしょうが、近所にラウンドアバウトができたら私もしみじみと味わいに行きたいものです。