みなさまこんにちは。

最近は輸入車を見かけるたびに「あ、⚪︎⚪︎だ。カッコいいなあ。でもスス溜まってるんだろうなあ。どれくらい溜まってんのかなあ・・・」と考えずにはいられなくなってしまいました。私の青春を返せ。輝くとき(ry

さて、当ブログでは滅多に書かない、というかたぶんはじめてのメカの話です。

このエントリーを書き始めた動機は、「エンジンオイルの最適な交換サイクル(とコストのバランス)って何だろう?」ということでした。ところが調べれば調べるほどにドツボにはまり、我がプジョー308SWの心臓である1.6リッター直噴ターボエンジンが抱える問題点、それもけっこうクリティカルで、期末試験で例えれば「ここは絶対100%確実に出ますよ」レベルで「あなたそんなことも知らずにクルマのブログ書いてたんですか?」と言われても「そうなんですテヘペロッ」としか返しようのない問題でありました。

かなり長くなってしまったので結論から申し上げますと、「少なくともPSA・プジョーシトロエンのEP6型1.6リッター直噴ターボエンジンを日本で使用するにあたっては、エンジン内部へのカーボン堆積に十分に注意を払い続けなければいけなさそうだ」ということです。

注意レベルとしては、私の個人的な感覚では「AL4並み」といったところでしょうか。みなさん、AL4の次はEP6ですよ。マジかよ・・・

以下の内容は、自分でオイル交換もしなければ吸気バルブの実物を見たこともない、そして人生初の直噴ターボに乗る私にとっては新しいことでしたが、「そんなの当たり前でしょ」という内容も多いと思います。そしてなにぶん議論の分かれがちなテーマですので、記載にあたっては極力信頼のおけそうな記事やソースにあたることを心がけました。

■そもそもエンジンオイルは何を選べばよいのか?
まずは当エントリーの動機となったエンジンオイルについて。

前車106と前々車206でお世話になっていたショップでは、確か半年または4,000kmくらいでのオイル交換を推奨していて、銘柄もメーカー純正ではないペトロカナダを使っていて、粘度は忘れましたが純正値ではなかったと思います。なんでもペトロカナダを長年使ったエンジンはバラしてみると内部が大変きれいということでした。

ところが、私の2012年式プジョー308SWの取扱説明書には、指定オイルがTOTAL QUARTZ INEO ECS (5W-30)で、推奨交換時期は「1年または2万km」と書かれています。また、「車の使用頻度が高いとき、市街地や高温環境下での使用が多いときは、メンテナンス時期を早めるようにして下さい。」とあり、さらに「注意」として「ターボエンジン車には、必ず指定されたオイルのみを使用して下さい。」と記載されています。

QUARTZ INEO ECS (5W-30)はネット通販の小売価格で1リットル2,000円前後で販売されています。ちなみに5W-30 SNグレードのトヨタ純正オイルはネットで4Lで2,500円くらいで売られていました。最安の3倍ほどの値段ですね。





はたして割高な純正オイルを使い続ける必要性はあるのでしょうか?それを判断するには、まずは自分の車のエンジンについて理解しておく必要がありました。

︎■ターボ車は「特殊車両」だった
私の2012年式初代プジョー308SW(ABA-T7W5F02)のエンジンは、156馬力の直列4気筒1.6リッター直噴ツインスクロールターボガソリンエンジン(EP6CDT)です。このEP6型エンジンはBMWとPSAの共同開発によるもので、別名プリンスエンジンとも呼ばれているものです。

それでは、エンジンオイルを選択する上で何が重要なのか、まずはプジョーシトロエンに純正オイルを供給しているトタル社のサイトを覗いてみました。

プジョー、シトロエンの車に使用するエンジンオイルには、専用規格が設定されています。 この規格を取得するには、プジョー・シトロエン社が指定する厳しいエンジン試験等をクリアし、メーカーアプルーバル(認証)を取得する必要があります。 ACEA規格(ヨーロッパ規格)だけでは、プジョー、シトロエン車に適合しているとは言えません。
ご存知ですか?プジョー・シトロエン専用規格
- TOTAL -

ということです。そして、308SW(T7W5)の指定オイルQUARTZ INEO ECS (5W-30)はこのように書かれています。
極めて厳しいACEA:C2規格を取得し、環境性能とロングライフを両立
・最新技術を投入した最先端のLow SAPS(低灰分、リン、硫黄)オイルで、触媒(特にディーゼル車のDPF)への影響が少なく、排気ガスをクリーンに保つ環境に配慮した設計
QUARTZ INEO ECS
- TOTAL -


では、なぜ「推奨」ではなく、「指定」なのでしょう。

「ターボエンジンには高温下でも安定した粘度を保つ熱安定性、カーボン、デポジットの発生を抑える清浄分散性に優れた高品質のオイルを選定する必要があります。」
エンジンオイルに関するQ&A
- BPジャパン -
「ターボ車はエンジンの発熱量がターボ未装着車(NA)に比べてはるかに多く、オイルもより過酷な条件下に置かれます。熱の発生量が多いということは、オイルの熱による酸化劣化も促進されるのです。」
「ターボ車は特殊車両の一部とお考えになり、特にオイルのメンテナンスには注意を払う必要があります。」
みなさまの疑問&質問にニャルフがお答え。
- ガルフオイル -

ということでした。今や一般化したターボ車も、オイルメーカーの視点では特殊車両ということなんですね。

うーん、これだけ読むととりあえず指定オイル一択かなあ。もちろん、純正よりも優れた効果と高いコストパフォーマンスを発揮する製品があっても不思議ではありませんが、5W-30/ACEA C2のオイルは日本では他にあまり選択肢もないですからね。

■オイルに厳しい日本の道路
それでは、オイル交換の頻度についてはどう考えたらいいのでしょう。T7プジョー308の「1年または2万km」って長くないですか?

欧州ではではどうなってるんだろうと思って調べたら、トタルUKのサイトに同じ車両の推奨交換サイクルが掲載されていました。
Use : Normal
Intervals : Change 30000 km / 24 months

Use : Severe
Intervals : Change 20000 km / 12 months
Peugeot 308 1.6 16V VTi THP (110 kW) (2009 - 2013)
- TOTAL UK -

なんと英国だと通常使用で2年または3万km、シビアコンディションで1年または2万kmなんですね。まあロンドンの中心部を除いては、街を抜けると制限速度60マイル(96km/h)で数10km先の次の街までダーッと走る感じですからね。エンジンやオイルへの負担もそれだけ少ないということなんでしょうね。

これが日本に来ると通常で1年または2万km、シビアコンディションではさらに短くなります。日本におけるシビアコンディションについては、ホンダのサイトに分かりやすい例示がありました。
ストップ&ゴーを繰り返すような渋滞や、エンジンやオイルが充分に温まらない状態の低速や短距離の走行、また登坂路やホコリが多いなどの使用環境によっても、クルマはシビアコンディションにさらされています。
シビアコンディションをご存知ですか?
- ホンダ -

「1回の走行距離が8km以下、時速30km未満」が「走行距離の30%を占める」って、大都市圏の週末ドライバーはほとんど当てはまるんじゃないですかね。さらに、山坂道も雪道も氷点下も「シビア」だとなると、日本でシビアじゃない環境を探す方が難しいような気もします。平地で年間を通じて寒くなく都会でもない地域って、埼玉県の北東部くらいしか思いつきません。

■直噴エンジンの持病。それもかなり重大な
そしてもう一つの重要なポイントは「ガソリン直噴」です。ご存知の方も多いと思いますが、おさらいしておきます。従来型のエンジンが燃料を吸気ポートに設置されたインジェクターから噴射するのに対し、直噴ではシリンダー内に顔を出したインジェクターから直接噴射します。

直噴エンジンは、現在の低燃費・エコ・高出力の時流に乗って各社の採用が進み、フォルクスワーゲンのTSIエンジンやBMW、メルセデスベンツなど、欧州メーカーでは定番になっています。プジョーは208の一部と308以上の全車が直噴ターボ。シトロエンもC3とDS3の一部を除き直噴ターボ。フォルクスワーゲンもゴルフやポロなど主力車種は軒並みTSIと呼ばれる直噴エンジンです。

排気量・気筒数を少なくして機械損失を減らしたガソリン直噴エンジンにターボチャージャーなどの過給機を組み合わせることで、大排気量の自然吸気エンジンと同等の動力性能を確保

ポート噴射エンジンと比べ、エンジン始動直後の冷間時には燃料の気化・霧化に優れるため、排気ガス低減に寄与する。
ガソリン直噴エンジン
- wikipedia -


このように低燃費・高出力・エコでダウンサイジングといいことずくめのような直噴エンジンですが、そのデメリットはとても無視できないものなのでした。

筒内で混合気を作り出す関係で、ポート噴射エンジン以上に霧化が難しく、結果として高圧多孔インジェクターで強制的に霧化させている。ポート噴射エンジンでは、液体のままポート壁面に付着した燃料も時間をかけて気化がされるが、直噴エンジンでは燃料噴射後に気化する時間が十分に無い為、黒煙発生の素となる。

通常のガソリンエンジンに比べ、ガソリン由来のPM2.5(粒子状物質)の排出量が5~10倍以上ある

ススの一部は燃焼室内に残留してエンジンオイルによって回収されるためオイル汚れが激しいので、ポート噴射式に比べてオイル交換サイクルを短くしたほうがよい。

ポート噴射式エンジンに比べて、シリンダー内にガソリンの燃えカスが溜まることが多い。

吸気側への燃焼ガスの吹き返し(主にオーバーラップ時に発生)により、マニホールド~吸気バルブ間にカーボンが堆積する。
ガソリン直噴エンジン
- wikipedia -


特にこの吸気系へのカーボンの堆積がやっかいです。なぜならば、直噴エンジンのインテークマニホールドは燃料が通らないため、ガソリンやガソリン添加剤による洗浄効果が期待できないからです。

さらに、ブローバイガスと呼ばれる未燃焼の混合気(非常に汚れている)が吸気系に還流されてポートやバルブに付着することもあるそうです。

■直噴エンジンのトラブル事例
で、最悪どうなるのかというと、エンスト、アイドリング不調、パワー低下、燃費悪化、果てはエンジン不調を引き金としたATの不調などの様々なトラブルの原因となるそうです。直噴エンジンのトラブル事例について調べてみると、プジョー、シトロエン、MINIなどもう枚挙に暇がありません。
他にインジェクターや高圧燃料ポンプの不具合を疑いましたが、それらはすべて正常値だったので今回はカーボンが原因と断定しました。
207ターボがきかない
- まるなかブログ -
アイドリング時の微振動、変速の不自然さ、そして冷却ファン回りっぱなし
プジョーシトロエン 直噴1.6の持病
- 車は体を表す -
Miniにはエンジン不調が結構見受けられる。ちょっとした息継ぎ、アイドルの不安定、など
BMW MiniR56 CooperS エンジンオーバーホール
- 27motorsports -
ヘッド分解作業でインテークバルブを抜くと…酷いことに。
R56クーパーS及びJCWの直噴エンジンの問題発覚!
- MINIに乗るということ -

最後のミニクーパーS、1万kmであの汚れですか・・・

私の308SWは登録3年で15,000kmですが、今のところアイドリング不調などの自覚症状はまったくありません。ただ、以前同型式で走行3万kmの代車に乗った時に、明らかにパワーがないと感じたんですよね。今思えばカーボンが溜まっていたのかなあと勘ぐってしまいます。断定はできませんけれども。

さて、この直噴エンジンの吸気系へのカーボン堆積問題、海外、特に北米ではいくつか記事が上がっておりまして、症例の数からしてそれほど大きな問題とは言えないものの、注意を要すると認識されているようです。
We’ve heard rumblings that blackened buildup on the backsides of intake valves is a major problem and something that could be disastrous for motorists in the coming years.
Is Carbon Buildup a Problem With Direct-Injection Engines?
- Autoguide -
Cars with this technology might end up in the repair shop more frequently
Direct-injection engines improve performance and save fuel, but at a price
- Consumer Reports -
We typically see this problem when a car is running at a less than optimal engine oil level. Some Mini Cooper owners are having their oil serviced every 15,000 miles based on the manufacturer's recommendation. This is problematic...5 Q&A's: Intake Valve Carbon Build-up, Direct Injection & Mini Coopers


北米では2006年から2008年あたりのフォルクスワーゲンやアウディの直噴エンジンで問題が起きているとされています。

■直噴エンジンのカーボン堆積問題とのつきあい方
ということで、直噴エンジンはその構造上インテークバルブへのカーボンの堆積を完全に防ぐことはできなさそうです。

それではどうすればよいのでしょうか?できうる対策をまとめてみました。以下のすべてを実行することは難しいですが、エンジンを長持ちさせたければ、できることからコツコツと対策をしていくのが得策のようです。

1.オイル交換のサイクルを短くする
エンジンオイルが汚れて減った状態では、燃焼室内でより多くの煤が発生し、インテークバルブに付着して堆積しやすくなるということです。私自身は年間7〜8,000kmの走行ですが、今後は9〜10ヶ月程度の5,000kmを目安に交換したいと思います。

2.洗浄効果の高いガソリンを選ぶ
先述の通り、直噴エンジンでは燃料が吸気ポートを通らないため、ガソリンによるポートやインテークバルブの洗浄効果は期待できません。しかし、インジェクターや筒内の洗浄効果があることと、あわよくばブローバイガスに含まれるススも少なくなるのかもしれません。私は最寄りのENEOSでヴィーゴ(じゃなかったシェルのV-Powerだった・・・)を入れていますが、これはこれでいいんじゃないかと。

3.ガソリン添加剤はどう?
フォルクスワーゲングループやBMWグループは純正のガソリン添加剤を発売しています。直噴エンジンにも使えるそうですが、直噴エンジンの場合添加剤は吸気バルブに直接届かないということを理解した上で使う必要がありそうです。

4.吸気系クリーニング
有名なのはワコーズのRECSですね。負圧口から点滴のように薬剤を注入して吸気バルブなどに付着したカーボンを取り除きます。ただし、コチコチに固着してしまうと効果は出にくいため、予防的な施工がよさそうです。施工には専門知識がいるため基本的に小売はされていません。
特に207、2008、208、308、3008、508、やC4、C5、DSシリーズの搭載のターボエンジンは非常にカーボンが溜まりやすく、エンジン不調の原因にも成っております。
エンジン カーボンクリーン
- Auto Pois Rouge -


こちらはビルシュタインのカーボンクリーニングシステム。これだと直噴の場合は吸気バルブの清掃はできない、かな?
燃料の送りラインと戻りラインにカーボンクリーンシステム機械を接続し薬剤と燃料の混合液によりアイドリングしながら洗浄を行います。
エンジンカーボン洗浄
- Gulf Stream -

こんなのもありました。ドライアイスの塊を噴射してカーボンを削ぎ落とすそうです。すげーなこれ。「おそらく世界初」だそうです。
圧縮空気を利用してドライアイス(3mmペレット)を高速噴射し対象付着物(汚れ)を除去するドライアイス洗浄。
D・S・Cプロジェクト後編 ドライアイス洗浄
- ミナト自動車 -


5.データ管理
こちらはアルファ156の方ですが、OBD2からデータを読み取ることで吸気システムが正常に動作しているか把握することができるそうです。これいいですね。でも私の知識では全然ついていけません・・・
空燃比計では、「JTSのネーミング・・」でも述べましたが煤の出やすい空燃比の領域をチェックする事と、O2センサーが正常に働いているかのチェックが行えます。
JTSというエンジン 後編
- Alfa156に魅せられて -


6.エンジンオーバーホール
最悪のパターンです。エンジンを分解して手作業で清掃して組み戻す。こうなると20〜30万円コースになるそうです。

7.延長保証
少ない走行距離で問題が出ている例もありますので、メーカーの延長保証ができる場合は、必須だと思います。私は来月車検ですが、もう迷わず延長します。

ということで、かなり長くなりましたが、PSAの直噴ターボ乗りの方にとってはあまりいい話じゃありませんね。まあフランス車だから何かあるだろうとは思っいたし、そうでもなければ直噴エンジンについてこんなに調べることもなかっただろうと思います。悩ましい問題ではありますが、持病とはうまく付き合っていくしかありませんね。