みなさまこんにちは。

もうすぐ春ですねえ。

えっ?「ちょっと気取ってみませんか」?

いやいや、そこまで歳じゃないですよ・・・

さて、先日はフォルクスワーゲンのゴルフトゥーランに試乗したのですが、試乗を終えて家に戻るとこんな車が停まっておりました。
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はい。ホンダのステップワゴンですね。もう5代目になるそうなのですが、いわゆる「元祖ミニバン」であります。何が元祖かというと、当時、日本の「ワンボックスカー」は商用車ベースで運転席の下にエンジンが置かれるキャブオーバー型が主流だったのでした。

これに対して1996年に登場したステップワゴンはFFレイアウトを採用。低床で広い室内のパッケージングを実現してヒットを飛ばし、他社がこぞって追随したそうです。現代のミニバンの「専用ボディ」「FFレイアウト」「スライドドア」という文法は、20年前にホンダが確立したんですね。

私はスライドドア車を所有した経験はありませんが、トヨタ・アルファードや日産・キャラバンコーチを借りて旅行したことがあります。車両の善し悪しは別としても、パワースライドドアは子供の乗せ降ろしがしやすくて便利なものですね。全手動だときついですが、最低でもオートクロージャー(手で半ドア状態まで閉めると自動で締め切ってくれる機能)があるといいですね。
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さて、日本ではどこへ行ってもトールボディにスライドドアのミニバンがたくさん走っているのですが、いったいどれくらいあるのでしょうか。

まず、スライドドアを装備した国産乗用車のモデル数は、各社のウェブサイトでラインアップを確認したところ、30モデルほどありました。OEMや同一ボディの姉妹車は別モデルとしてカウントしましたが、商用車や商用車ベースのワゴンタイプは除いています。メーカー別ではトヨタが11モデルと断トツで多く、日産とホンダは4モデル。その他各社も2〜3モデルで、スバルだけがゼロとなっています。

次に販売台数です。自販連の統計によると、2015年の車名別販売台数ランキングでは、登録車30モデル中、スライドドアが装備されたモデルは11もありました。トヨタのノア・ヴォクシー・エスクワイァが合わせておよそ20万台、アルファード・ヴェルファイアがおよそ10万台売れています。その他にもトヨタ・シエンタやホンダ・フリードなどがあります。

これらを合わせるとおよそ60万台で、乗用登録車の年間販売台数270万台の約2割にあたります。ランキング圏外でもエスティマ、オデッセイ、エルグランドやプレマシーなどがありますので、登録車の3割程度がスライドドア車とみてよいかと思います。

また、軽自動車も2015年新車販売台数1位のホンダN-BOXと2位のダイハツタントはスライドドアで、どちらも20万台近く売れています。軽乗用車の方は全モデルの販売台数が公開されていて、スライドドア車は確認できただけでおよそ50万台ありました。一部のモデルはヒンジドア車とスライドドア車が混在していてその内訳は不明ですが、軽乗用車の年間販売台数150万台の3分の1はスライドドア車ということになります。

つまり、日本で1年間に売れる乗用車のざっと3分の1、100万台以上にスライドドアが装備されていると理解してよいのかと思います。そりゃあたくさん走っているわけです。まさにミニバン大国ジャパンですね。


- トヨタ・ヴォクシー Wikipediaより -

それでは、輸入車の方はどうなのでしょう。2016年3月現在、日本に導入されている正規輸入車でスライドドアを装備する乗用車は、メルセデスベンツ・Vクラス、フォルクスワーゲン・シャラン、ルノー・カングーのわずか3車種のみです。このうち、商用車ベースでない純粋な乗用車はシャランだけです。


シャランは初代がヒンジドア、現行の2代目が両側電動スライドドアなのですが、スライドドアは日本から強く要望して実現されたということなんですね。
新型シャランは開発段階から日本の声をきっちり聞いてつくられたという。日本からの要望は「スライドドアが両側にあって、しかも電動であること」であり「2列目と3列目が収納できること」といったもの。
【新車のツボ5】 VWシャラン 試乗レポート
- Sportiva -


そもそも欧州では、乗用車ベース(Car-based)のMPV(Multi Purpose Vehicle)はほとんどがヒンジドア車です。スライドドアを備えるのは私が知る限りでは、前述のシャランとその姉妹車のセアト・アルハンブラ、フォードのB-MAXとグランドC-MAXくらいだと思います。

フォード・グランドC-Max

これが商用車ベース(Van-based)だと各社が漏れなくラインアップしており、フォルクスワーゲン・キャディ、同トランスポーター、プジョー・トラベラー、シトロエン・ベルランゴ、フィアット・ドブロ、ルノー・カングーなどの幅広い選択肢があります。商用車ベースなのでユーティリティに優れるのは間違いありませんが、走行性能や内装のクオリティは乗用車よりも落ちるとされています。

フォルクスワーゲン・キャディ

それでは、欧州でスライドドアの乗用車はどれほど売れているのでしょうか。Left-lane.comなどによると、フォルクスワーゲン・トランスポーターやシトロエン・ベルランゴ、フォードC-MAXは2015年に8〜9万台くらい売れたようです。まあまあ売れてるじゃんと思いきや、ゴルフが60万台、ポロやクリオが40万台弱の市場ですからね。年間10万台弱だとランキングでは50位近辺というところです。

もっとも、欧州ではMPV自体が日本ほどは売れておらず、売れ筋のシトロエンC4ピカソやルノーセニックも10万台強ですから、やはり保守的な乗用車の強い市場です。

そしていまや欧州のユーティリティビークルの流れはMPVよりもSUVやCUV(Crossover Utility Vehicle)に移っていますから、MPVの先行きはあまり明るくないといえそうです。

欧州でスライドドアのMPVが売れていない理由はよくわかりません。欧州でスライドドアが否定されているというようなリソースは見つかりませんでしたが、商用車っぽい雰囲気があまり受けないんですかね。

欧州車のスライドドア事情についてはいくつか面白い記事がありました。欧州初の電動スライドドアを装着した小型車は、なんとプジョー1007だったのだそうです。
The Peugeot 1007 represented a number of firsts in the automotive world. For example, it was the first small car in Europe to feature electric sliding doors. At the time, it also received the highest ever Euro NCAP score ever awarded to a supermini.(プジョー1007にはいくつもの「初」があった。欧州の小型車としては初めて電動スライドドアを装備し、スーパーミニセグメントとしては過去最高のEuro NCAPスコアを獲得した。)
Car Confessional: Peugeot 1007(自動車懺悔室:プジョー1007)
- Petrol Blog -


2004年に登場したプジョー1007は、当時の(そして現在も)欧州Aセグ車としては珍しいトールボディとスライドドアをまとい、パリの狭い路地でも乗り降りが容易であることをウリに発売されました。


しかし、姉妹車のシトロエンC2よりも200kgも重く運動性能が劣ること、価格が高かったこと、スライドドアや2ペダルMTの故障が多かったことなどから販売は低迷。2009年には生産を停止し、累計販売台数は15万台にも満たないという、惨憺たる結果に終わりました。

プジョー1007は日本にも輸入されましたが、電動スライドドアの故障が非常に多かったそうですね。知り合いの仏車関係者の話では、1007はディーラーが下取ってもインポーターの中古認定が取れず、静かに静かに葬り去られていったということです。

2012年にはフォードがリアにスライドドアを採用したB-MAXを発売しましたが、ここでもプジョー1007の失敗が取りざたされています。

フォードB-Max
If Ford gets the rest of the B-Max package right and the model proves successful, then makers could be rushing to create their own version of a small, pillarless minivan.(もしフォードがB-Maxを成功させることができれば、競合他社もピラーレスの小型ミニバンにこぞって参入するだろう。)

Peugeot predicted annual sales of 130,000 a year, but customers didn't take to the innovation, especially as the minivan was priced higher than competitors.(プジョーは当初(1007の)販売台数を年間13万台と見積もっていたが、特に価格が高かったことから、その革新性は市場に受け入れられなかった。)

By the end of 2005, Peugeot had slashed production targets for the following year to 70,000 and in 2006 that was revised to just 50,000. In 2009, it was killed off altogether(2005年末には翌年以降の生産台数を7万台まで引き下げ、翌年はさらに5万台まで下げられた。2009年には生産を停止した。)
Ford B-Max is innovative but fate of the Peugeot 1007 is a warning(フォードB-Maxは革新的だが、プジョー1007が辿った運命には要注意)
- Automotive News -


うーん、なるほど。

そしてこちらはスライドドアではありませんが、オペル/ヴォクソールの現行メリーバは後席ドアにリアヒンジ式という珍しい構造を採用しています。しかし、それも次期モデルでは普通のヒンジドアに戻されるようです。

The existing Meriva promised greater ease of access from its rear-hinged back doors, but the continued presence of a B-pillar meant that the gains were modest - and the expensive, complex construction appears to have been abandoned for the next generation.(現行メリーバはリアヒンジ式の後席ドアによって優れた乗降性を実現していたが、依然としてBピラーが存在することからその効果は限られていた。そして、その高価で複雑なしかけは次期モデルでは捨てられることになったようだ。)
2017 Vauxhall Meriva replacement spotted - latest spy pictures(2017年式ヴォクソールメリーバの最新スパイショット)
- Autocar -


ということで、現在のヨーロッパ各社の小型車のラインアップや今後の動向をみるに、彼の地では「ドアの革新」というのはあまり受け入れられないようですね。MPV自体が下火ということもあり、欧州のスライドドア車は商用ベースモデルに集約されていくのではないかと思います。

あ、ゴルフトゥーランの試乗の直後にステップワゴンに乗っていろいろと思うことがあったからと書き始めたエントリーですが、前段がだいぶ長くなってしまいました。

次回は「ゴルフトゥーランの試乗の直後にステップワゴンに乗っていろいろと思うことがあった。」をお届けします。

そんじゃーね。