みなさまこんにちは。

明けそうでなかなか明けない関東地方の梅雨ですが、私にも梅雨明けが訪れるのでしょうか。明けるのを座して待つのではなく、自分で切り拓くしかありませんかそうですか。

さて、シトロエンが3代目となるサブコンパクトハッチバックの新型C3を発表しました。

こちらです。
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こ、これはだいぶ変わりましたね・・・

先代はこれですからね。


ちょっとフェミニンで可愛らしかったいでたちが、ホイールアーチモールとドアサイドプロテクターを備えて、完全に今風なクロスオーバーに変貌してしまいました。

えっ?!ちょ、ちょっと、C3子、どうしちゃったの〜?!夏休み中に何があったの?!

という感じですが、これは決して破れかぶれの方向転換ではなく、厳しい競争環境に置かれたシトロエンのブランド戦略の方向性を具現化した大きなステップなのです。たぶん。

欧州で復権を目指すシトロエン


そのシトロエンの置かれた環境とはどのような状況なのでしょうか。

シトロエンC3はBセグメントのハッチバック。Bセグメントといえば欧州では最量販カテゴリーで、普通車とクロスオーバーと合わせて350万台。乗用車販売の実に4分の1占める大きなマーケットです。

C3は2002年の初代から累計で350万台以上販売されたそうですが、PSAの発表によれば2015年の世界販売台数は212,900台(MPVボディのC3ピカソ含む)。これはシトロエンではC4に次いで2番目に多く、PSA全体でも5本の指に入る基幹車種となっています。

このうち6割に当たる12万台のC3が欧州で販売されましたが、2015年に30万台以上売れたフォード・フィエスタ、ルノー・クリオ、フォルクスワーゲン・ポロには遠く及ばず、20万台規模のオペル/ヴォクソール・コルサ、プジョー・208、トヨタ・ヤリス(ヴィッツ)の後塵を拝し、そればかりかシュコダ・ファビアやダチア・サンデロにも届かない、クラス9番手の実績でした。

C3にとってはモデル末期にあたるとはいえ、ヨーロッパで2番目に大きなPSAグループの基幹車種の販売実績としては、かなり心もとない数字です。

もっとも、シトロエンブランド自体が2000年以降ジリジリと販売台数を減らし続け、2015年は欧州ブランド別で13位の55万台でした。いまや56万台のトヨタや日産よりも「マイナー」な存在となってしまっているのです。

上記の数字からは独立したDSブランドの8万台が除外されているとはいえ、DSが存在しなかった2000年代前半には90万台近く販売されていたことを考えると、欧州におけるシトロエンのプレゼンスの低下は否定できません。

とりわけ、C3やC4ハッチバックといった主力車種の販売が冴えないことから価格競争に訴えるを得ず、多額のキャッシュバックによってリセールバリューやブランドイメージが落ちるという悪循環に陥っていました。

そのため、PSAグループにとっては、欧州におけるシトロエンの競争力を回復し、ブランドを立ち直らせることも重要な課題のひとつなのであります。

PSAグループの経営再建策である2014年の「Back in the Race」と、その後の「Push to Pass」で打ち出された3ブランドの方針は明確でした。

プジョーは「大衆ブランド最上級」。DSはその上を目指す「アバンギャルドでラグジュアリー」。そして、シトロエンは「クリエイティブで手に取りやすいブランド」であり、具体的な方向性としては「モダンなデザイン」「手頃な価格」「コンフォート」などのイメージが提示されました。

「シトロエンはダチアやシュコダのようなバジェットブランドに成り下がるのか」という声も聞かれますが、シトロエンを低価格ブランドとガチンゴで競合させてしまえば、フランス国内の開発生産体制を維持できないでしょう。そのため、あくまでもフォードやフォルクスワーゲン、ルノーやオペルを競合とするメインストリームブランドとして戦う必要があります。

その答えがこの度発表された新型C3なのです。

なぜC4カクタスのようなクロスオーバールックになったのか?これは、C3を競合に埋没させないためにどう差別化するか、ということを検討した結果、思い切ってSUVの方向に振った、ということだと理解しています。

シトロエンの新C3に込めた考え方については独オートゲフュールが撮影したワールドプレミアの動画が詳しいです。C3のデザイナー、製品主幹、シトロエンCEOの3名がC3について英語で説明する、ある意味貴重なビデオです。




クロスオーバー的な新型C3


さて、これまで見てきたシトロエンが置かれた環境。この前提を踏まえて新C3の姿を見てみましょう。


新型C3のディメンションは全長3.99 m、全幅1.75 m、全高1.47 m、ホイールベースが2.54 mです。先代よりワイド&ロー(5cm長く、2cm広く、5cm低い)であるものの、サイズ的には普通のハッチバックです。

切り立ったフロントエンドとショルダーラインの高さが特徴です。


樹脂製のドアサイドプロテクターAirBumpの一部に塗装が施されています。オートゲフュールでは「ぶつけても塗装が剥げないためのAirBumpに塗装しちゃうなんて矛盾してるよね(笑)」と突っ込まれていましたが。


なお、AirBumpレス仕様もあるようですが、これを見るとやはりAirBumpがあった方がバランスがいいのかなと。


インテリアもC4カクタスのようにすっきりしています。AirBumpをモチーフにしたと思われるディテールもそこかしこに。


最近のPSAではお約束のタッチスクリーン。物理ボタンは親の仇のように徹底的に、徹底的に排除されています。


パノラミックグラスルーフ。画像を見る限りではルーフシェードが非透過型に見えます。ここ数年のPSA車では障子のような半透明のシェードが採用されていて、日本の猛暑には辛い仕様だったのですが、日本市場の声が届いたのでしょうか・・・


C4カクタスと共通と思われる、ベルト製のインナードアハンドル。


ダッシュボードにもファブリックが施されています。動物(レザー)を使わずに「イイ物感」が演出されています。


「セグメント最大容量」のグローブボックス。右ハンドル仕様で同じ容量が確保されるとしたら、イギリス人も腰を抜かすでしょう。


先代C3の目玉だった運転席の真上まで迫り出した「ゼニスウインドウ」は廃止されたとみて間違いないでしょう。


いかがでしょうか。新型C3内外装ともにユニークで他にはないデザインであり、かつ今風のかっこよさやポップさも表現されていると思います。「ウォッチャー」にとっては驚きの大変貌ですが、若年層には意外にすんなり受け入れられるのではないでしょうか。

「超快適」なシトロエンよ、もう一度


新型シトロエンC3のもう一つの特徴が「シトロエン・アドバンスト・コンフォート」の考え方を採用した「コンフォート性能」の追求です。

「シトロエン・アドバンスト・コンフォート」は、より快適な乗車体験を提供するための総合的な取り組みで、シートやサスペンションなどの動的な機能だけでなく、グラスルーフやグローブボックスなどのアメニティ機能、カラーリングや内装材などの「雰囲気」についても対象となるそうです。

「Advanced Comfort」に盛り込まれた機能や特徴の中には既存の装備も含まれているので、マーケティングギミック的な香りも感じないわけではありません。しかし、「シトロエン=コンフォート」という、ブランドの立ち位置を明確に打ち出すという意味では重要なメッセージなのかと思います。

なお、新型C3の発表に先立って「Progressive Hydraulic Cushions(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)」なる新形式のサスペンションが発表されました。

シトロエンを象徴する独自の油圧サスペンションシステム「ハイドラクティブ」は、「魔法のじゅうたん」のような乗り心地を提供することで有名です。しかしハイドラクティブは高コストであることなどから、現行C5を最後に廃止が決まっています。

ハイドラクティブに変わる新機構として開発されたのが、このプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(ハイドロクッション)なのです。
シトロエンはハイドロニューマチックサスペンションで世の車好きを熱狂させた。60年の歳月を経てハイドロサスに引導を渡すのは、プログレッシブハイドローリッククッションだ。(Citroen wowed car-loving ladies and gents with the hydropneumatic suspension. More than six decades later, this type of suspension will be put to rest by progressive hydraulic cushions.)
シトロエンがプログレッシブハイドローリッククッションとアドバンストコンフォートプログラムを解説(Citroen Progressive Hydraulic Cushions & Advanced Comfort Program Explained)
- autoevolution -


記事を読む限りでは、ハイドロクッションは、サスペンションユニット(スプリングとダンパー)の上下の両端に1個ずつ装着されるそうです。これは、その名に「Progressive」とある通り、サスペンションのプログレッシブ効果(路面からの入力の大きさに応じて弾性力を変化させる仕組み)を生み出す機構のようです。

つまり、 良好な路面で弱い入力の時はハイドロクッションは働かずに「魔法の絨毯」のようなソフトな乗り心地になります。しかし柔らかいだけでは容易に底付きして快適性が損なわれるため、荒れた路面などで強い入力があるとサスペンション両端のハイドロクッションが動作してショックを吸収するのだそうです。

普通の自動車でも不等ピッチスプリングやリンクの採用によって多かれ少なかれプログレッシブ効果を生み出しているらしいのですが、シトロエンのハイドロクッションは、20の特許技術によって低コストで実現しているとのことです。

では、このハイドロクッションは新型C3に採用されるのでしょうか?

残念ながら、ハイドロクッションは2017年後半のリリースを目指して開発中であり、2016年秋の新型C3の発売には間に合いません。

しかし、理論的にはAセグメントのC1を含むどの車種にでも装着でき、かつシトロエンだけでなくプジョーやDSのモデルにも装着する方針だそうですので、なかなか楽しみな技術であります。

アドバンストコンフォートプログラムの適用によって、今後のシトロエンのキャラクターはより明確になっていくのかと思います。

新型C3はC4カクタスとキャラ被り・・・なのか?


さて、シトロエンとしてはかなりのストライドとなる今回のC3のモデルチェンジ。懸念としては、先にデビューしているC4カクタスとキャラクターがかぶるのでは、という点があるかもしれません。

C4カクタスの方がSUVっぽいプロポーションですが、新型C3よりも全長が15cm、ホイールベースが6cm長いだけで、カクタスはBセグとCセグの中間のようなサイズです。シトロエン自身が「C3にはカクタスのスピリットを盛り込んだ」と明言していて、どちらも似たようなモデルに見えます。

それもそのはず、C4カクタスはCセグメント車の「C4」の冠を戴きながら、BセグメントのPF1プラットフォームを使用しているのです。そして、新型C3も公式リリースでは「最適化されたA platform」とあるものの、既存のPF1プラットフォームを利用しているようです。

実質的には同じBセグメントですから、需要の食い合いはあるでしょうが、C3とC4カクタスのどちらが売れてもいいということなのかもしれません。

「シトロエンはどんどんクロスオーバー/SUVの方に振っちゃってどうなるのかなあ」

と思われる方もおられるかと思いますが、C4カクタスやC3にとどまらず、シトロエンから「普通の車」は消えてしまうかもしれないのです。

シトロエン製品統括のザビエル・プジョーによれば、次期C4は同社が計画する8つの「シルエット(ボディ形状)」に含まれてはいるが、フォード・フォーカスの直接のライバルにはならないということだ。(Citroen product boss Xavier Peugeot revealed that while a new C4 is part of the French brand’s planned eight ‘silhouettes’ (body styles), it may not be a regular rival for the Ford Focus. )
次期シトロエンC4とC5はSUVになるかもしれない(Next-generation Citroen C4 and C5 models could become SUVs)
- Auto Express -


確かに、超超コンサバティブなC4とC5の次の姿はなかなか見出しにくそうな気がしますので、シトロエンの「一族総エアバンプ化」というのも頷けない手ではありません。

シトロエンの発表資料にも「fluid and unaggressive(滑らかで非攻撃的)」「non-automotive look and feel(非自動車的なイメージ)」といった言葉が並んでいるように、これから発表されるシトロエンは私達が抱いている既成のイメージからはどんどんかけ離れたものになっていくのかもしれませんね。

しかし、他に埋没してしまうよりは徹底的に弾けていただいた方がいいのではないでしょうか。新型C3を眺めていると、フォードフィエスタやフォルクス・ワーゲンポロ、デザインコンシャスなルノークリオまでも古典的に見えてきます。このC3にハイドロクッションなんかが装備されるとかなり面白そうですね。

それでは今回も長くなりましたが以上です。