みなさまこんにちは。

2020年も9月半ばになり、暑かった夏がようやく過ぎようとしています。新型コロナ禍で子供達の夏休みもわずか2週間で終わり、感染拡大第2波とみられる状況もなかなか収束せず、「新しい日常」という不便を強いられる生活です。

しかし、大変な問題ではあるものの、現時点では取り返しのつかないような大事に至らなくて本当によかった。え?コロナ?いや、我が愛車2012年式プジョー308SWのエアコンの話です。なにせガスがかなり漏れていますからね…
image
エアコンガス漏れの動かぬ証拠。エアコンドレンから自宅駐車場の床に垂れ落ちたオイル状の液体(蛍光色は3か月前にガスと共に注入したリークチェック剤)

さて、2020年9月のいま「7人乗りの大きすぎない輸入車」を探している方は、プジョー5008かメルセデス・ベンツGLBのどちらにするかで悩んでいらっしゃると思うんですよ。

もちろん輸入車の7人乗りはこれだけではなくて、フォルクスワーゲンのトゥーランやシャラン、BMW 2シリーズグランツアラー、シトロエンC4スペースツアラーなんかもあります。

あります。が、これらはすべてMPVやミニバンと呼ばれる車種であり、発売から年数が経っているモデルも多く若干旧世代感が否めません。

そして、もう少しゆったりと大きなボルボXC90やメルセデス・ベンツGLS/GLE、BMW X5、アウディQ7などを覗くと「たっけえなあ」となるわけですよね。

となるとやはり、5008かGLBか……
image
雑コラで申し訳ありません。

かくいう私も散々悩みに悩んで、どちらの車種も複数回に渡り一般道と高速道路まで試乗して、考えに考え抜いた挙句、結果として繝。繧サ励ず繝ァ?包シ撰シ撰シという運びになったわけですが、その過程において、色々と調べたり分かることもありましたので、備忘とご参考のために記しておければなと。

(過去の試乗記)
メルセデス・ベンツGLBに高速試乗。満載のハイテクと優秀なパワートレインに唸らされました。

メルセデス・ベンツGLB 200dは非の打ち所のないファミリーSUVでした。

プジョー5008に200km乗ってSUVのなんたるかが分かったような気がします。

■市場のリーダー5008と満を持して登場したGLB
image

現行プジョー5008は2017年9月に発売された2代目。初代のミニバンスタイルとはガラリと変わり、シャープなスタイルのSUVに変貌を遂げました。CセグメントSUVとして欧州で大ヒットを飛ばし、それまで経営難に陥っていたプジョーを救ったともいえるモデルです。5人乗りモデルである姉妹車の3008とはフロント部分の大半を共有していますが、5008は3列7人乗りを実現するために、ルーフがより後方まで引き延ばされているのが特徴です。なお、5008はすでにフェイスリフトが発表されていて、2021年には日本にも導入されるものと思われます。

IMG_5811

一方のメルセデス・ベンツGLBは2020年に発売されたピッカピカの新規モデル。メルセデスのSUVはこれまで大きい順からGLS、GLE、GLCとGLAがありましたが、GLCとGLAの間を埋める形で登場したのがGLBです。

GLBは、Aクラス、Bクラス、GLAなどと同じMFA(モジュラー・フロントドライブ・アーキテクチャー)2」というFFプラットフォームが採用されています。巷に丸っこいクロスオーバーSUVが溢れるなか、GLBはよりボクシーで保守的なSUVスタイルを採用しました。

なお、以前メルセデスには「GLK」というコンパクトSUVが販売されていて、北米を中心に大きな人気があったそうです。GLKは構造上左ハンドルのみという制約がありながらも、都内でも見かけることが少なくなかったモデルです。

GLKはFRの旧Cクラスベースであり、公式な後継車種はやはりFRのMRAプラットフォームに乗るGLCなのですが、GLCがクーペライクなクロスオーバースタイルであることから、一部にはGLBが実質的なGLKの後継車種ではないかとの指摘もあります。

■似てないようで似ている2台
それではプジョー5008とメルセデス・ベンツGLBの基本スペックを見てみましょう。対象はディーゼルターボの「5008 GT」と「GLB 200d」を選択しました。こうしてみると、スペックは大変似通っていることがわかります。

プジョー
5008 GT
メルセデス・ベンツ
GLB 200d
日本発売時期2017年9月2020年6月
寸法(mm)全長 4,640
全幅 1,840
全高 1,650
全長 4,650*
全幅 1,845*
全高 1,700
ホイールベース
 (mm)
2,8402,830
最小回転半径 (m)5.85.5
重量(kg)
<サンルーフ車>
1,690
<1,720>
1,760*
<1,800>*
乗車定員 (名)77
エンジン1997cc 直列4気筒
ディーゼルターボ
1950cc 直列4気筒
ディーゼルターボ
最高出力
(ps/rpm)
177/3,750150/3,400
最大トルク
(Nm/rpm)
400/2,000320/1,400
変速機8AT8DCT
燃費(km, WLTC)16.617.5
ブレーキ 前/後Vディスク / ディスクVディスク / ディスク
サスペンション 前/後マクファーソンストラット / トーションビームマクファーソンストラット / 4リンク
タイヤ205/55R18235/55R18
駆動方式FFFF
駆動制御グリップコントロール
*AMGラインパッケージ装着車

まず、サイズはGLBの方が5cmほど高いだけでほとんど同じ。ホイールベースも僅か1cmの差。エンジンはどちらも2L直列4気筒ディーゼルターボです。変速機の段数はどちらも8速。カタログ燃費は少しだけGLBが優位。実際両車に乗ってみても、運転感覚や取り回しの違いはほとんど感じません。

大きな違いはエンジン特性とサスペンションですね。5008の車重はGLBより大人1人分軽く、GLBより2割大きな400Nmというトルクで、アクセルを踏み込むとシートに背中が押さえつけられるような猛烈な加速を味わえます。一方のGLBは、5名乗車で高速に乗ってもに不満はありませんが、「パワフル!!」というほどではないかと思います。

ただし、静粛性が高いのは断然GLB。5008のディーゼルも以前に比べればかなり静かになった方ですが、GLBの静粛性はさらに数段上回っています。

リアサスペンションは、5008のトーションビームに対して、GLBは4リンクを採用。落ち着いた乗り心地や高速コーナーでのハンドリングや安定感に関しては、シャシーによりコストがかけられていそうなGLBが優勢です。

■安全装備
次に安全装備を見てみましょう。5008にも自動停止機能付ACCや自動ブレーキ、アクティブブラインドスポットモニタリングといったADAS機能が一通り装備されていて、2020年時点でライバルと比べて大きく見劣りするものではありません。これまで20年ほどフランス車に乗っている私からすれば、フランス車の信じられないような進歩に涙腺が緩むのを止められないのですが、やはりというかなんというか、ドイツ御三家のメルセデスはさらに上を行っています。

プジョー
5008 GT
メルセデス・ベンツ
GLB 200d
ADASACC(自動停止)
自動ブレーキ(歩行者)
死角検知(BSM)
パークアシスト
レーンキープアシスト
アダプティブハイビーム
ACC(自動再発進)
自動ブレーキ(歩行者)
死角検知(BSM)
パークアシスト
レーンキープアシスト
アダプティブハイビーム*
アクティブステアリングアシスト*
自動車線変更
気絶時緊急ブレーキ

ソナーフロント*・バックソナー
360度カメラ*
フロント・バックソナー
360度カメラ
*はオプションまたはパッケージオプション

両車のADAS機能の大きな違いは、GLBのACCには再発進機能がつくことと、ステアリングアシストです。実は5008にもレーンキープアシストがついていますが、これはウインカーを出さずに車線を跨ぎそうになるとステアリングが反対方向に振られるというもので、積極的に車線を維持するものではありません。一方GLBのステアリングアシストは、低速時は前走車、高速時は車線を認識して自動的にステアリングを操作してくれる優れものです。もちろん、両車ともに、前走車がいない状態でコーナー手前で自動減速する機能はありません。

■ユーティリティ
さて、5人家族の7人乗りを考えた場合のユーティリティはどうでしょうか。ここは圧倒的に5008です。

大きな違いは2列目です。5008の2列目シートは3席が同じサイズの独立式で、3つのシートすべてにISOFIXアンカーが備わっています。サイズにもよりますが、2列目に3台のチャイルドシートやジュニアシートを設置することも可能で、これは小さな子供が3人いるような家族には大変便利です。また、地味な装備ですが、5008に標準装備される後席の引き上げ式サンシェードや格納式のシートバックテーブルも、子育て世代には何かと便利な装備です。

プジョー
5008 GT
メルセデス・ベンツ
GLB 200d
便利機能電動テールゲート
2列目サンシェード
シートバックテーブル
電動テールゲート
ブレーキホールド
2列目機構
3座独立式
3座独立スライド
40:20:40
スライドは2分割
ISOFIXアンカー
2列目3席2列目2席
3列目2席
積載量(L, 3列目使用時 / 3列目格納時 / 2列目格納時)
167 / 702 / 1,862130 / 500 / 1,680
エアコンタッチパネル式物理ボタン式

GLBの2列目は普通車と同じ40:20:40。そしてシートは2分割です。つまり、2列目の運転席側の1席は個別にスライドしますが、助手席側と中央の2席は繋がっていて一緒にスライドします。ISOFIXアンカーは2列目は両側2席のみ。その代わり、3列目の2席にもISOFIXアンカーが備わっています。

3列目の使い勝手はほぼ同等。両車ともに、3列目シートは床下に格納されていて、後方から紐を引っ張って起こします。2列目シートの肩のあたりのレバーを引いてイージーエントリーができます。大人が出入りするには多少窮屈なのも変わりません。

荷室容量も5008の方が多いですね。3列目を起こした状態、3列目格納時、2列目格納時の順に、5008は167L、702L(カタログ数値。メディアでは762Lとの記載もある)、1,862L。対してGLBはそれぞれ130L、500L、1,680Lです。最も頻度が多い3列目だけ畳んだ状態で5008がGLBを4割も上回るのは驚きです。ほんとかなあという気がしなくもないですが、データはこうなっているんですよね。積載量にこだわる方は現車で確認した方がよいでしょう。

次に、インフォテ系。両車ともにフル液晶メーターを採用しています。GLBには2020年現在業界最高峰といわれるAIアシスタント付きシステム「MBUX」を装備していて、この部分はGLBが5008を圧倒しています。5008のメーターもフル液晶でかっこいいですが、GLBはカーナビの解像度も高く、ステアリングホイール左右の小さなタッチパッドで操作ができたり、メーター側にももちろんナビ画面を表示できたりと、至れり尽くせり感はなかなかのものです。
image
GLBのフル液晶メーターパネル。デザインはともかく機能は素晴らしい

また、PSAをはじめ多くのメーカーがエアコンをインフォテに統合してタッチパネル化する中で、GLBは物理ボタンを維持しています。使い勝手としてはこれもポイントですね。

■価格
そして誰もが気になる価格。2020年9月15日現在の車両本体価格は、プジョー5008GTの484.2万円に対してメルセデスGLB 200dは512.0万円。その差は27.8万円です。これにほぼ皆さんつけるであろうナビパッケージをつけると5008が508.9万円で、GLBは530.9万円。その差は22万円に縮まります。あとはオプションをどこまでつけるかですね。有償ボディーカラーはあくまでもお好みですが、つける方も多いと思います。

プジョー
5008 GT
メルセデス・ベンツ
GLB 200d
本体価格(万円)484.2512.0
ナビ24.718.9
オプション有償色 6.0
1stCls Pkg 30.6
有償色 7.1
AMGL Pkg 28.0
サンルーフ 16.8
合計545.5582.8


5008のパッケージオプション「ファーストクラスパッケージ」には、サンルーフやフロントカメラ、パークアシスト、運転席電動シートなどがつきます。お値段は30.6万円で合計価格は545.5万円。

GLBのAMGラインパッケージは、サンルーフは別で28万円です。外観上の違いとしては、フロントグリルがスポーティなダイヤモンドグリルに変わり、内装は赤ステッチのレザーDINAMICAシートになります。さらに外観だけでなく、サスペンションは高速寄りの設定のスポーツコンフォートタイプに変わります。ホイールは標準の18インチから19インチに。そしてアダプティブハイビームアシストや64色アンビエントライトも。これだけついて28万円は大バーゲンですね。これにプジョー5008と装備を合わせるためにサンルーフを装着すると、582.8万円となります。

新車価格ではGLBが37.3万円高と、あまり変わらないですね。ただし、5008の場合、値引きが期待できることと、試乗車上がりの新古車であれば、1年1万km未満の車を本体価格300万円台で入手することも可能です。

■デザイン
そして最後にデザインです。デザインは多分に人それぞれ好みが分かれる領域でありまして、どちらが優れていてどちらがそうでないかを一方的に断定することはあまり適切ではありません。

まあ、とはいえ、デザイン面はプジョーですよ。5008の方が断然若々しくてカッコいい。間違いありません。

外観では、プジョー5008は獰猛なライオンのようなフロントマスクに加え、サイドモールやルーフラインの装飾を巧みに用いて、よりシャープに細く見せる工夫が凝らされています。GLBのスタイルは、あくまでも保守的で驚きも衒いもないオーソドックスなSUVスタイル。

ボディーカラーも同系色で比べてみると、プジョーの青緑「エメラルド・クリスタル」が艶やかで魅惑的ともいえるのに対し、メルセデスの青緑「デニムブルー」は、メタリックなのにどこかぼやっと重い雰囲気です。メルセデスは白と黒と銀以外には興味がないのではないかとすら思えます。
image

そして内装。5008のインテリアはデビューから3年経った今でもまったく古さを感じさせず、いまもって未来感に溢れています。ドアトリムの隙間からさりげなく照らすアンビエントライトも、悪戯に明るすぎず素敵なんですよ。



それに比べてGLBの方は、なんと言ったらいいんでしょうか。最近のメルセデスの目玉装備になっている、あのかまぼこ板をペタッと置いたようなメーター一体型液晶スクリーン。機能は素晴らしいんですよ。でもあのダッシュボードをフランス人に見せたら「そうですね。私達は通常ああいったものをデザインとは呼びません。もちろんある機能を果たす目的で構成された意匠、という意味ではデザインなのかもしれません。しかし、私たちが定義するデザインとは、単に機能を果たすだけに留まらず、モデル(車種)という一定の世界観をもって完結する環境の一部として境目なく溶け込み、全体の流れを妨げないものでなければならないのです。唐突であったり、部分が主張しすぎるのは美しいデザインとはいえません。そしてこの赤いステッチを見てください。あなたはスポーティモデルと呼ばれる車の内装に赤いステッチがあしらわれているのを今まで何回目にしましたか?このように使い古されて擦り切れたような手法を繰り返すなんて一体いま西暦何年だと思っ……」などと言われてしまいそうです。
image

それはともかくてすね、GLBのデザインは、これ単体で見れば別に悪くはないと思うんですが、やはり未来的で若々しさに溢れるフランス車と比べてしまうと、どうにもこうにも野暮ったく、トヨタ車の内装に通ずるような重苦しさを感じずにはいられません。

真面目なドイツ人がそれデザインだやれデザインだと、加飾装飾を足し込んでキラキラピカピカになっていく。これでは吉田拓生さんに「ドイツの田舎者といった風情のGLB」と言われてもぐうの音も出ません。

ということで、プジョー5008とメルセデス・ベンツGLB、似たような車でありながら、どちらも大きな特徴があり、一長一短があってなかなか難しい選択ですよね。

【障害発生情報】
本文の一部の表示に不具合が発生しております。ご迷惑をお掛けしますが、現在復旧に努めておりますので何卒ご了承ください。