みなさまこんにちは。

さて、プジョーのフラッグシップであるDセグメント車、508のフェイスリフトが発表されました。

こちらです。


うわー、いかつくなりましたねえ。

だって、フェイスリフト前はこうですもん。


フェイスリフト前の前期型は、グワッと開いた「フローティンググリル」と呼ばれる大きなグリルと、往年の206の流れをくむ「フェリーヌデザイン」のイメージを残した、釣り上がったライトが印象的な個性的なデザインでした。

それでもプジョー508は、あの辛口批評で知られるトップギアでは「虫顏(bug-eyed)」「クシャおじさん(gurning)」などと言われた先代308や407あたりと比べるとだいぶマイルドになっていました。

そして今回のフェイスリフト。完全に普通化路線ですね。


フロントグリルの意匠は先にデビューした2代目308と似ていますが、ヘッドライトの角度はだいぶ水平に近くなったように見えます。フェイスリフトでは電球の位置は動かせないでしょうから、ランプシェードの造形を三角から四角に変えたんですね。エレガントなツールリングセダンからマッチョなスポーツセダンに転換したという印象です。



やっぱり、中国からのリクエストなんでしょうね。というのも、508はもともとフランスと中国で生産される「グローバルカー」です。508の2013年の世界販売台数は88,492台でしたが、その36%にあたるおよそ32,000台は中国で販売されました。中国はプジョー508にとっては最大の市場なのです。

3,200台じゃありませんよ。32,000台です。もっとも中国でのPSAグループ全体の販売台数は55万7千台でしたから、それに比べりゃ10%にもみたない数字です。

その中国の、より派手に強く大きく見せるデザインに対する嗜好を取り入れたらこうなった、ということだと思います。

雰囲気は同じPSAグループの中国専用車DS 5LS(DS5 LSではありません。念のため)とそっくり。


好きかどうかと言われれば、うーん、フランス車にしてはちょっとマッチョ過ぎるかなあと思います。フランス車の魅力はやっぱりデザインですよね。ドイツ車のように力を誇示するようなデザインではなく、イタリア車のように華美にすぎることもなく、いい具合に力が抜けた優雅な佇まいが表現されるのがフランス車の特徴です。

「そんなに『俺が俺が』みたいなこと言わないで、しっとりゆったり自分らしく生きましょうよ。」とでも言われているかのような、そういう精神的な余裕こそが豊かなんだと言われているかのようなデザイン。それがフランス車がフランス車たる所以だと私は思います。

そう考えると、新型508はフロントグリルで堂々と自己主張するドイツ車のパターンにも見えます。かといって前期顏が完璧かというと、そうでもないと思いますが、まあ、やっぱり普通になったなあと。

もっとも、206以降のフェリーヌ顏で完成度という点で成功した、206を超えたと呼べるデザインはありませんから、そういう意味では正しい進化の形なのかもしれません。

いいですよ。プジョーやシトロエンが中国でジャンジャンバリバリ売れてくれれば、というか、それしかPSAグループが復活する道はありませんから。それで余裕が出てくれば小規模マーケットの日本にも少しは恩恵があるでしょう。

こちらはインテリア。欧州仕様の前期型にはあったセンターコンソールのコマンダーがなくなっています。


リアはあまり変更はありませんが、トランクリッドのクロームのブレードはなくなりました。


新型508のヨーロッパでの発売は今年の9月。日本にも遅くとも来年初めには入ってくるのでしょう。もともと日本で台数が出るモデルではありませんので、プジョージャポンの販売には大きな影響はないものと思います。