みなさまこんにちは。

私の2012年式プジョー308SW。来年5月に初回車検を迎えるのですが、今のところ目立ったトラブルもなく順調であります。今の唯一の問題は、シフトゲートからのビビリ音ですね。 プラスチックの部材同士がこすれ合うギシギシ音ですが、これが運転中始終鳴っておりまして、なんとかならないかなあと。

まあでもそのくらいっちゃあそのくらいです。仏車乗りの皆様は「そんなものがトラブルと言えるか!喝っ!」とお感じになられるでしょうが、そういう小さなことを気にかけられるほど、フランス車の品質が向上しているということですね。

さて、日本では輸入車のミニバン(MPV)の選択肢は極端に少ないのが現状でありますが、その原因は欧州のMPVがほとんど投入されていないことであることは言うまでもありません。

欧州ミニバンの代名詞ともいえるのがルノーのエスパスですが、この度フランスのパリで開催された国際モーターショーで、5代目エスパスがデビューしました。

初代エスパスのデビューは1984年ですから、もう30年になります。今でこそモノスペースの乗用車は珍しくも何ともありませんが、初代エスパスは「世界初のMPV(ルノー調べ)」であり、その極めて斬新なコンセプトとデザインで一世を風靡しました。

こちらは初代エスパスですね。車名はその名もズバリ、フランス語で「空間」です。


4代目にあたる先代エスパス。発売は2003年ですからもう11年前です。普通のミニバンですね。


そして今回デビューした5代目がこちら。


これは大変貌、というかもはやまったく別物に見えますね。フォードのS-MAXやプジョー5008などの既存の欧州ミニバンとは一線を画すプロモーションです。

最新のファミリーフェイス。ちょっとフォルクスワーゲンティグアンぽいかな。


プロポーションはミニバンというよりSUVっぽいですね。ルノー自身「従来のMPVから離れエレガントで流麗なクロスオーバーを目指した」としています。


ワイド&ローな佇まい。全高は先代より6cm低められています。最近のルノーに共通するサイドの「くびれ」も健在です。


リアの造形。リアフェンダーのあたりからテールゲートの角に向かって流れるように跳ね上がるラインが特徴的です。


前後左右のアンダーガーニッシュが黒色なのは、プジョー2008などのSUVやフォルクスワーゲンパサートオールトラックなどのオールロード系モデルによく見られる特徴です。アクティブな印象に加えて全高を低めに見せる効果があります。さらに、前後バンパーにはアンダーガード(っぽいもの?)が装着されていて、SUV的な演出がなされています。

インテリアも上質な雰囲気です。


EDC(デュアルクラッチ)モデルはシフト・バイ・ワイヤ(シフト操作を電気信号で伝達する技術)によってフローティングコンソールが実現しています。


メータークラスターはTFT液晶の単眼式。速度計とタコメーターが切り替わったりするみたいです。


センターコンソールには8.7インチの大型液晶モニターが鎮座。エアコンが物理ボタンなのは賢明だと思います。


2列目は欧州では定番の三座独立式。3列目もチラ見えしています。


いやー、いいですね〜。スペックもざっと見てみましょう。

スリーサイズは全長4.85m、全幅は1.87m、全高1.68mです。直接の競合として想定されるのは、フォードS-MAX、フォルクスワーゲン シャラン、セアト アルハンブラなどですね。

車重は先代比最大250kg削減。新プラットフォーム「CMF」を採用したことに加え、アルミ製ドアや樹脂製テールゲイトなどの軽量素材を採用したことが効いているそうです。

エンジンは1.6リッターのみで3種類。160馬力のENERGY dCi 160ツインターボディーゼル、130馬力のENERGY dCi130ディーゼル、200馬力のENERGY TCe 200ガソリン、です。組み合わされるトランスミッションは6速または7速のデュアルクラッチ「EDC」か、6速マニュアルとなります。4輪操舵の「4 Control」も採用されました。

これはぜひ実車を見てみたいですね。ルノージャポンの販売も好調ですから、ぜひ日本にも導入して欲しいですね!

えっ?

来ない?

無理?

左ハンドル専用設計?

5代目エスパス、残念ながら右ハンドル車の生産は計画されていないそうです・・・
"that large, seven-seat MPV sales weren’t strong enough in Britain to justify engineering the car for right-hand drive."
"the car’s platform prohibits a right-hand drive conversion. "
- Auto Express -

Auto Express誌によると、新型エスパスは左ハンドル専用設計であり、たとえフェイスリフトされても右ハンドルが発売されることはない、と報じています。

パリショーの会場で悲報に触れたイギリスのメディアやジャーナリストからは、続々と悲しみの声がよせられました。






まあ、ルノーはイギリスが弱いから仕方ないか・・・。

2013年のイギリスにおけるルノー車の販売台数は約46,000台でシェアは2%でした。同じフランスのプジョーが10万台、シトロエンは8万台売れていますから、イギリスでのルノーのプレゼンスは決して強くないことがわかります。

売れなければ売り物もなくなる悪循環。ルノーは2012年に英国で販売する右ハンドルの車種を削減しておりまして、カングーやウインド、ラグナなどとともにエスパスも廃止されているのです。
"Official: Renault Slashes UK Lineup, Gone Are the Modus, Kangoo, Wind, Laguna, Espace and Gordini Models"
- Carscoops -

話はそれますが、イギリスってカングーはバンモデルだけで、乗用車モデルは販売されていないんですね。

え?じゃあ日本仕様は?
"右ハンドルのカングー乗用モデルは日本専売となっております。"
- ルノー岡崎 -

あー、カングーの乗用車モデルの右ハンドルって、日本専用なんですね。これが廃止されたらルノージャポンの販売がどれほど減るかなんて恐ろしくて考えたくもないですが、ゆめゆめイギリスのカングーバンが廃止されないことを祈るばかりですね。

さて、話は新型エスパスに戻ります。

パリショーにおけるエスパス自体の注目度の高さに加えて、右ハンドルが存在しないという話題がポルト・ド・ ヴェルサイユの会場を駆け巡ったのかどうか、私は行っていないのでわかりません。しかし、ルノー日産連合のカルロスゴーンCEOが「ちょ、待てよ。出さないなんて一言も言ってないじゃん!」と火消しに乗り出す事態に発展いたしました。

“I’m absolutely not saying never. We’re waiting for the response of the market and of the press – if we make it big in Europe, then we could go global."
- Auto Express -

ゴーン氏曰く、「我々は市場やメディアの反応を待っている状態で、(英国を除く)ヨーロッパで成功すれば、グローバルに打って出られるだろう」と。要するに「右ハンが売れそうなら考えるよ」と、こういうことですね。

うーん、どうなるんでしょうか。

個人的には試乗したいランキング上位なのでぜひ右ハンドル車を出してもらいたいですが、ルノーの主要右ハン国(英、日、豪)の販売状況を見るに、なかなかハードルは高いかもしれませんね。

5台目ルノーエスパス、それでもヒットの予感がするモデルですから、動向を暖かく見守りたいと思います。