みなさまこんにちは。

フランス車にお乗りの皆さまにおかれましては、11月の3連休に幕張で開催されたフレンチ・フレンチ幕張に参加された方もいらっしゃると思います。私も行きたかったのですが、生憎家族の許可がおりませんで、その腹いせというわけではないのですが、折りよく2時間の自由時間が取れましたので、ディーラーに試乗に行ってまいりました。

というわけで、今日試乗したのは、BMW2シリーズグランツアラー!BMW初のミニバン、7人乗りモデルですね。
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全長4,565mm、全幅1,800mm、全高1,645mmというコンパクトサイズのミニバンです。

外装デザインはBMWそのものですね。これまでにない箱形のプロポーションですが、キドニーグリルにL字型のテールランプ。誰がどこからどう見てもBMW以外には見えようのないデザインです。
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3列シートなのでルーフ後端も高さが必要です。別にかっこ悪いわけじゃないんですが、シトロエンC4ピカソなんかに比べるとぼってりとした印象は拭えません。

グランツアラーの外装は、もうちょっとスポーティなイメージの方がよかったかもしれません。フォルクスワーゲンの新型トゥーランの方がシャープでスポーティに見えるというのは、少しよろしくないですね。

内装も、シートが3列であること以外は、これまでのBMWの文法にぴったりと沿ったものかと思います。
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メーターもBMWらしくシンプル。
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センターコンソールも物理ボタンが多めですが、スッキリとシャープでいいですね。
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リアハッチのダンパーがぶっといですね。剛性に効いているのでしょうか。太いのはケーシングだけなんてことはありませんよね。
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標準ナビはタッチパネルではありませんが、ダイアル式のコマンダーは直感的で使いやすいですね。動作も軽快でソフトウェア開発レベルの高さが伺えます。(フランス勢が低すぎる・・・?)

また、バックソナー連動カメラには、壁やポールなどの障害物に沿って四角いオブジェクトが表示され、画面上で動きながら近づいてきます。つまり、真っ暗闇でもオブジェクトが表示されて障害物があることがわかるわけですね。な、なるほど・・・!
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ただ、内装の雰囲気はいいのですが、プラスチックの質感はいまいちですね。パワーウインドウスイッチはプジョーやシトロエンの方がいい素材を使っていますし、ルームミラーを動かすとギチギチと安っぽい音を立てます。走りに関係ないコストは極力削っているということなんですかね。
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今回一番の割り切り所と感じたのがこの後席のエアアウトレット。デザインされていないし、質感はプジョーだと208かそれ以下といった印象。
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それでもグランツアラーをフォローすると、コックピットの雰囲気や質感は3シリーズとほぼ同じだと感じました。こちらは展示車の320dツーリングです。
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さて、今回試乗させて頂いたのは、2シリーズグランツアラーの218iラグジュアリーというグレードです。パワートレインは1.5リッター3気筒直噴ターボに6速トルコンAT。車両本体価格は418万円です。

運転してみて一番感心したのは、やはり何といってもハンドリングですね。適度な重さのステアリングは、コーナーの入口で切った瞬間にノーズがスパッと向きを変え、とにかくよく曲がります。もう、曲がる曲がる。直線でも無意味にハンドルを切りたくなるくらい、素晴らしくよく曲がるんです。

そしてボディーロールなんか皆無なんじゃないかと思うくらい、上屋は一切揺れずについてきます。1,645mmという背の高さはまったく感じません。さすがに緊急回避的に車線変更をすると、後部に重いセクションを背負っていることに気づかされますが、実際そんな機会は年に1度あるかないかですからね。

そして、ロールが少ないからといって乗り心地が悪いかというと、そんなことはありません。サスペンションのセッティングは硬めですが、突き上げ感はほとんどなし。強めの入力も極めて短時間に収束するので、不快な揺れを起こしません。この辺りはさすがBMWですね。

一方で気になるのはエンジン。試乗車は1.5リッターの3気筒直噴ターボ。これは必要十分なパワーではあるものの、あまり色気がないんですよね。特に低回転域ではディーゼルのようにガサついていてスムーズさにも欠けるので、踏み込む楽しさがありませんね。これは率直にいって期待外れです。

グランツアラーの後に、5人乗りのアクティブツアラーのディーゼル、218dも少しだけ運転させてもらったのですが、218iと218dを比較したらディーゼル一択ですね。ディーゼル特有の豊かな低速トルクに加えて、スムーズさも218dが上回っています。しかもディーゼルの方が燃費は30%もいいし、燃料代も25%も安い。高速では試していないのですが、一般道を運転する限りでは218iを積極的に選ぶ理由が見当たりません。

そしてミニバンしてはやはり気になるユーティリティ。2列目シートは40:20:40。中央部は補助席という位置付けで、両側の2席に比べてクッションが薄く盛り上がっているので、大人が長時間座ることはできません。ここは人によっては選択の分かれ目になるかもしれません。


欧州のMPVは、2列目の座席が3席ともまったく同じかほぼ同じサイズの「3:3:3」であるのが常識です。トゥーラン、シャラン、C4ピカソ、そして私の旧308SWも3:3:3です。

これは一長一短なんですよね。4:2:4は両サイドの快適性が高い分、中央席の使い勝手が劣ります。大人が長時間座れないばかりでなく、シートベルトアンカーの幅が狭すぎて、子供用のブースター(座面だけのタイプ)がアンカーを塞いでしまってロックできない場合があります。

3:3:3の場合は、両サイドの快適性は前者よりも当然劣るのですが、その分平等な使い勝手を得られるわけですね。

そういう意味では、グランツアラーは「家族のための」と謳いながらも、家族に振り切っていないという印象があります。

おなじ7人乗りであるBMWのX5も、ライバルとされるメルセデスのBクラスも2列目は4:2:4ですから、これがプレミアムクラスのプライドということなのかもしれません。

2列目の空間はまずまずの広さでしょうか。旧308SWよりは広いが、現行グランドC4ピカソよりは狭いといった印象です。
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あと、何かと便利なシートバックテーブルは、本国仕様の画像では確認できるものの、日本ではオプションにもなさそうです。リアドアに格納されるサンシェードもありません。

ベースグレードの218iスポーツは368万円ですが、ディーラーさんの話ではこのグレードを選ぶ人はほとんどいないそうです。大半がラグジュアリーかMスポーツ。BMWらしいのはファブリックシートのMスポーツの方だと思います。もし私が購入するなら、218dのMスポ(435万円)でしょうね。ラグジュアリーより4万円安いし。


ということで、例えミニバンであってもその走りにはまったく隙がない2シリーズグランツアラー。正確無比なステアリングはスポーティなだけでなく、低速域でも運転しやすいクルマであることがわかりました。

じゃあ、いまが乗り換えの時期だとしたら、グランツアラーを買うか?

うーん・・・・・・

実用性はフランス車より劣り、「家族に振り切れていない」ものの、そこは目をつぶれる範囲かと思います。2列目が4:2:4であっても、まあ良しとしましょう。

でもねえ、グランツアラーはなんかストイックな感じなんですよねえ。優しさに欠けるというか、柔らかさに欠けるというか。乗り味じゃありませんよ。雰囲気です。なんというか、手の甲で頰をスーッと優しく撫でおろされるような雰囲気に欠ける、みたいな。

わかりにくいですよね。

フランス語が「アン、ドゥ、トゥロア・・・」なのに対して、ドイツ語が「アインス、ツヴァイ、ドゥライ・・・」みたいな。

わかりにくいですよね。

車両としてはよくできているんですけど、常に肩に力が入ってる感じなんですよね。

お前、ついさっきMスポがいいって言ってたじゃねえかって?

まあ、そうなんですけど。グランツアラーを買うなら218dのMスポだと思いますが、いまこのサイズのクルマを買うなら、やっぱりグランドC4ピカソなんだろうなあ・・・

なんでしょうね。ピカソの方がデザインがよく実用性が高いというのももちろんあります。でもそれだけじゃないような気もします。

BMW2シリーズグランツアラーに乗ることによって、よくはわからないが確かに存在しそうな「何か」を頂点とするドイツ車のヒエラルキーに組み込まれてしまうような気がする。そんなことは気にせずに好きなクルマに乗ればいいだけなんだけど、やはり気にせずにはいられない。

プジョーに乗ってて「仏車なんてポンコツだぜ」と言われても気にしないが、BMWに乗ってて「おいおいグランツアラーかよ」なんて言われたら、心が穏やかでなくなってしまうかもしれない。

日本でフランス車に乗るということは、そんな不安に対するアンチテーゼなのかもしれませんね。居場所があってよかった。

今回はこんな締めでよろしかったでしょうか。