みなさまこんにちは。

さて、プジョーシトロエンジャポンから、2015年の日本国内の販売実績が公表されましたが、ここに年別・モデル別の詳細な販売台数が含まれておりまして、ごく一部の仏車統計好き界隈で話題が沸騰しております。

プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:クリストフ・プレヴォ)は1月26日、2015年のグローバル販売実績と、日本国内・年別&モデル別販売台数内訳を発表した。
プジョー、2015年世界販売実績と日本国内・年別&モデル別販売台数内訳を発表
- motor cars -

プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:クリストフ・プレヴォ)のシトロエンブランドは1月19日、DSブランド車両を除く2015年のグローバル販売実績と、日本国内・年別&モデル別販売台数内訳を発表した。
シトロエン、2015年グローバル販売実績と日本国内・年別&モデル別販売台数内訳を発表
- motor cars -


このリリースには、プジョー、シトロエン(DS含む)の1988年から2015年までのモデル別の販売台数が記載されており、私の知る限り、国産車・輸入車を問わずこのような詳細な資料が公表されるのは珍しいと思います。

最初は内部資料が流出でもしたのかと思いました。どこぞのインポーターのように、販売店向けのセールスマニュアルをGoogleで検索できて誰でも閲覧できる状態に放置していたことがあったように、あまりITリテラシーの高い業界ではないと思っていましたので。しかし、これは正真正銘の公式発表です。

しかし、このような資料を公表した意図はなんなのでしょう?公表されたのは全モデルの販売実績ですから、売れていないモデルの数字も包み隠さず詳らかにされています。プジョーシトロエンの規模だと年間販売台数が100台に満たないモデルも存在していて、オーナーからは「うわっ、私の車、売れてなさ過ぎ・・・」といった声も聞こえてきます。

このような、普通ならば胸をはっては口にできないような統計を恥ずかしげもなく公表する理由はなんでしょうね。ビジネス上のメリットがあるとすれば、ディーラーなどの販売パートナーにも実態を知ってもらうということでしょうか。

「良いことも悪いことも含めてありのままの実態を知ってもらうことで、関係者全員に前向きな改善策を導き出してもらう」という意図があるのかもしれません。

これが新任のプレヴォ社長による、変化を促すための取り組みだとしたら、かなり的を射ているかと思います。自分が関わる仕事の重要な数字や指標を知らずにいるというのは、得点を知らされずに野球やサッカーをやるようなものですからね。プレヴォ氏は単なる支店長ではなく、経営センスのある方なのかもしれません。



さて前置きはこれくらいにして、肝心の数字を見ていきましょう。まずは2015年のプジョーのモデル別販売実績です。

image

- PCJ発表資料をもとに筆者作成 -

ご覧の通り、プジョーは308、208、2008の順に売れていて、この3車種で全体の8割を超えています。

新308の(17台の旧308を除く)2,121台という数字は、旧308のピークだった1,761台(2012年)を上回っており、今後に期待が持てます。一方で208と2008が奮っていないのは気になります。これはシングルクラッチの5速ETGが販売の足を引っ張っていることは明らかで、208はようやく昨年後半にアイシン製6速トルコンATが導入されましたので、もう売れない言い訳はできませんね。2016年はちょっと楽しみです。

一方で、508、5008、3008の「大きいプジョー」はまったく冴えません。3008と5008は2014年、508は2015年にフェイスリフトしたもののマーケットにはほぼスルーされてしまったようです。3008なんかは、ワールドワイドでは308の半分くらい売れているんですけどね。

これらのモデルは価格面ではかなりお買い得ですが、競合各社が揃えている運転支援システムなどの装備面では劣りますので、なかなか厳しいのかと思います。このセグメントの新型車としては、次期3008か6008が今年中に本国デビューしそうなので、日本導入は早くても年後半、遅ければ2017年になるでしょう。そのため2016年はよくても現状維持レベルかと思います。

続いて年別の販売台数を見ていきましょう。公開されている1988年以降では、1990年に1つ目のピーク、そして2003年にもう1つの大きなピークがありました。
10


5,414台を記録した1990年には205が2,726台、405が1,619台売れています。そして、90年代前半は「弾切れ」により落ち込むものの、1994年に登場した306が順調に伸びて98年に4,062台。そして99年発売の206がヒットして右肩上がりに成長します。206は2003年に8,657台売れていますが、これはプジョーブランドのモデル別年間販売記録のぶっちぎりトップとなっています。

しかしその206の販売もモデルライフに従って下降線をたどり、全体の数字もジリジリと減り続けて現在の5〜6千台近辺に落ち着きます。プジョーの2000年代の栄枯盛衰は典型的なバブルの様相(本来の価値以上に過大評価されて関係者が熱病に浮かされたようなお祭り騒ぎを謳歌するが、気がつくとあたり一面焦土と化していてぺんぺん草も生えない元の木阿弥に戻ってしまうこと)です。

しかし、プジョーの歴史では比較的存在感の薄い207でもピーク時に3,700台、307は5,400台も売れていますので、やはりブランドの力ってすごいんですね。

プジョーが再び2000年代前半のような勢いを取り戻せるかというと、そのためにはMINIやフィアット500といった強力なライバルを蹴散らさなければならないので、相当厳しいのかと思います。バブルは二度と来ないと思った方が賢明ですので、やはり、日本で売れる仕様のモデルをタイムリーに導入できるよう本国をつつきながら地道に積み上げるしかないのかと思います。

プジョーの2016年ですが、ど新規モデルはありません。販売に影響を与えそうな要素としては、プジョーとしては日本初となるディーゼルモデルの発売と2008の6速AT導入でしょうか。



続いてシトロエンを見てみましょう。シトロエン及びDSの2015年モデル別新車販売実績です。
image

- PCJ発表資料をもとに筆者作成 -

シトロエンの稼ぎ頭はなんといっても2014年にデビューした2代目C4ピカソ。シトロエンブランドの半分を占めていて、その救世主ぶりには目を見張ります。C3もモデル後期としてはまずまずかと思います。DSについてはDS3が安定して売れているのはよいですね。

続いて年別データを見てみます。1988年以降の販売のピークはなんと26年前の1990年。BXが3,649台、AXが1,458台でブランド合計で6,117台も売れていたんですね。プジョーよりもシトロエンの方が売れていたという、今では考えられない時代でした。
17


シトロエンの年間販売台数が6,000台どころか4,000台を超えたのは後にも先にもこの1年だけで、90年代半ばにはXantiaが屋台骨を支えたものの、その後は深刻な車種不足により長期低迷。一時は1,000台近辺まで落ち込みます。その後はモデルライフの波に揺られながら浮き沈みを繰り返し、DSラインの品揃えが整った2012年が3,795台で、直近のピークとなっています。

さて、シトロエンとDSの2016年はどうなるでしょうか。公式では「『BOLD』で『SMART』な新製品や追加ラインナップを投入」としていて詳細は不明ですが、こちらも新車のリリースはないようです。

C4ピカソのディーゼル導入でもあれば起爆剤になりそうですが、どうなんでしょうか。女性に似合うC3の6速AT化も待たれるところですが、英国にもラインアップされていないので難しいかもしれません。

DSラインは3車種の「純DS化」、つまりフロントグリルからシトロエンのシンボルであるダブルシェブロンを撤去するフェイスリフトが、本国ではすでに発売・発表されていますが、2016年中に日本にも導入されるかと思います。

しかし、昨年末に6速ATが導入されたDS3は少し伸びるかもしれません。フェイスリフトが効くかどうかはかなり微妙ですね。そのため、2016年のシトロエン・DSは現状維持プラスアルファがベストというところかと思います。

ということで、やっぱりプジョー・シトロエンにとっては、2016年のキーワードは「ディーゼル」になりそうですね。まあ、車格的にもプジョーシトロエンにディーゼルというのはマッチしていると思いますので、よい成果が出ることを期待しております。