みなさまこんにちは。

さて、前回は超電導リニアとはいったい何なのかということについて(私が)学びました。

今回はいよいよリニア体験乗車の本編です。本当に本物の超電導リニアに乗ってきましたよ。

体験乗車の資格を得るまで


さて、リニアに体験乗車するには、JR東海が募集する体験乗車と山梨県が山梨県民向けに行っている体験乗車があります。山梨県民の方以外は、JR東海の方に申し込む必要があります。
走行試験スケジュールの一部を活用して、超電導リニアの高速走行をご体験いただける「体験乗車」を実施いたします。
超電導リニア体験乗車実施に関するご案内
- JR東海 -


なおこのリニア体験乗車、ただでは乗れません。文字通り料金がかかるのです。JR東海主催のものは1区画(2席)4,320円、山梨県主催のものは1区画2,160円となっています。(いずれも2016年9月現在)

私が参加したのは2016年の第2回。どの日程のどの便に乗りたいかを第3希望まで記入して応募します。日程は14日間で1日6便運航されます。座席数は1便あたり120席ということですから、およそ1万人が参加できる計算です。それほど狭き門ではないのではないかと。

安心してください。駐車場はありますから。


体験乗車の開催地である山梨県都留市のリニア実験センターは電車やバスで行くにはなかなか不便な場所にありますが、案内には「体験乗車専用の駐車場はございません。ご来場の際は公共交通機関をご利用ください。」と書いてあります。

えー、駐車場ないの?大月駅からバスとか大変ですよね。本数少ないし。

ここは非常にわかりにくいのですが、結論を言うと車で行っても全く問題ありません。無料で駐車できます。

体験乗車を実施するリニア実験センターには、リニア見学センターとして「どきどきリニア館」と「わくわく山梨館」という2つの施設が併設されています。ここには140台ほどの無料駐車場がありますので、ここに停めればいいんですよ。

もちろん厳密には見学センターの訪問者用の駐車場ということになってはいるのですが、どうせ体験乗車した人はほとんど見学センターにも行くでしょうからね。

さて、中央道の都留インターを降りて丘の上の駐車場に車を停めると、リニア実験線が見下ろせます。

おー、見えた!橋のたもとにリニアが停まっている!!
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あれに乗れるんですね!!どきどきしてきましたね!!

どきどきしたままどきどきリニア館へ


子供達の「リニアに乗りたい!」という期待をよそに、当日は13時15分集合の第3便にはまだまだ時間がありますので、まずはどきどきリニア館を見学します。

どきどきリニア館の入場料は大人420円(当日再入場可)なのですが、体験乗車の人はなんと団体料金の330円に割引されました。やった!つーかそれも知らされてないし!

リニア館には先代の超電導リニアが展示されていたり、リニアの仕組みを学ぶことができます。
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こちらはミニリニア。3cm浮上して走ります。
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リニア館の目玉はなんといっても超電導リニアの走行試験を真近で見られることですね。走行試験は毎日やっているわけではありませんが、当日は体験走行ですから、当然見られるわけです。

リニアが走行を開始すると館内放送が流れ、走行の様子が館内のモニターに表示されます。
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そして時速500kmで建物の真横の実験線を通過します。速い速い!!もう私の古いカメラでは連写がぜんぜん追いつきません。
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いよいよ超電導リニアに乗車!


さて、どきどきリニア館を充分に堪能して気分も盛り上がってきて昼食をとって腹も満たされたところで、ようやく体験乗車の時間がやってきました。歩いて実験センターに移動します。

会場に入館する前に手荷物検査を受けます。飛行機と同じですね。そして、体験乗車の案内ハガキに記載された予約番号を使ってチケットを発券します。
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入場ゲートにバーコードをかざします。これも飛行機と同じですね。
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ゲートの先は会議室。ここで乗車前の事前説明があります。重要なのは「リニアの試験車両にはトイレがない」ということですね。
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説明会が終わり、いよいよリニアへ!殺風景な通路を通ります。
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リニアの乗車口は飛行機のタラップのようになっています。磁気を防ぐためにドアの周囲は密閉されていて、リニアの外観を見ることはできません。
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いよいよ車内です!!
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って、普通ですね。普通の新幹線です。

シートバックにはテーブルと折りたたみ式のカップホルダーもついていて、L0系が営業仕様の車両であることが伺えます。

しかし、5歳長女も「なんか新幹線じゃん」と指摘した通り、このインテリアはドキドキもワクワクもありませんね。まさかこのデザインで開業するとは考えたくありませんが、アバンギャルドとはいかないまでも、未来的でワクワクするデザインを望みたいですね。

全員が着席すると、「司令」と名乗る男性の声で「この度はご搭乗誠にありがとうございます」といったアナウンスが流れます。なぜ「運転士」や「車掌」でないのかというと、リニアは無人運転なんですね。だから先頭車両には運転席もなければ窓もない。リニアの先頭車両のデザインが異形に見えるのはそのためだったんですね。

司令が「リニアはこれまで160万キロを安全に走行してきました」と続けます。160万キロといえば地球125周分ですよ。東海道新幹線の東京〜新大阪1,447往復分。つまり途方もない距離です。

時速500kmのリニアの乗り心地は?


そしていよいよ発車。

「お、動いた。」

160万kmも走行試験を重ねているリニアには大変失礼ですが、初物に乗るとこの感想しか出ませんね。

気になるリニアの乗り心地ですが、時速150km程度まではゴムタイヤで走行しますので、ゴロゴロとザラついた乗り味です。ちょうど、リニアと同じくゴムタイヤで走行するゆりかもめのような感じですね。あれをもっとスムーズにしたような印象です。

質感としては、最新の新幹線の滑り出すような初期加速と比べると、リニアのそれはあまり高級な感じはしません。まあ、リニアにとっては時速150kmなんて助走に過ぎませんからね。

アナウンスが「ただいまより浮上走行に移行します。」と伝えます。

浮上といっても高度は変わりません。しかし、浮上の瞬間はタイヤの走行音と振動がなくなるのではっきりとわかります。天井に備えられた液晶モニターの速度計が200km/h、250km/hとみるみるうちに上昇していきます。

意外にに揺れますね。そして乗り心地は「硬い」です。「浮上」と聞くとフワフワとした浮遊感を想像しがちかと思いますが、そういった感覚はなく、継ぎ目のない平面をひたすら進む感覚です。

乗車時に感じた振動は主に横揺れで、常に「グッ、グッ」という割と硬めの揺れがあります。これは明らかに東海道新幹線のN700系や北陸新幹線のE7系などよりも大きな横揺れです。

しかし、新幹線の乗車中に感じる小さなピッチング(縦揺れ)や、モーターの出力の谷間のような前後Gは、リニアではまったく感じられません。そのため不安感はありません。

1本目は実験線の中ほどにある乗車口から線路の端まで移動するため、時速300kmほどで減速を始めます。

時速150kmあたりでタイヤが出て接地。これは飛行機の着陸と同じ感覚ですね。「ドンッ」という着地音とともに、それなりに大きな音と振動に包まれます。

3歳の次男も「ねえお父さん、いまタイヤ?いまタイヤ出た?」と興味津々です。

実験線の端から引き返して2本目はいよいよ時速500kmへ。タイヤ走行から浮上走行に移り、グングン加速して300km/h、400km/h・・・

次男「ねえ、いまタイヤ?タイヤ出てる?」

いや、いまは浮上中だよ・・・

そしてついに時速500km!車内からは「おお〜」という嘆声が聞こえます。
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時速500kmに到達して気づきましたが、一旦浮上してしまえば、時速200kmでも500kmでも乗り心地はほとんど変わらないと感じました。揺れるといえば揺れますが不安はありません。これはすごいですね。

トンネルに入る時の衝撃もまったくありません。トンネル内の照明が超高速で流れていきます。

いやー、時速500km。新幹線のおよそ2倍の速度でこんなに普通に走っちゃうなんてすごいなあ。まだ開業まで11年あるから乗り心地なんかは改善されていくのかな。これは2027年が楽しみだ・・・
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って、次男、時速500kmで走る超電導リニアの車内で寝てやがる!!

まあ、乗ってしまえば本当に拍子抜けするくらい普通に走っているだけですから、しょうがないですね・・・

実験線を2.5往復してリニアを降りると、あれ・・・?

まるで飛行機で1〜2時間飛んだように頭がぼうっとした疲れを感じました。体験乗車では実験線を2.5往復したので、走行距離はおよそ100km。途中で3回停車しても30分足らずですから、やはり超高速移動は疲れるんですかね。

リニアを降りて、リニアの歴史に想いを馳せる


乗ってしまえばあっという間に終了の体験乗車。なんというか、こんなに普通に走るとは驚きました。時速500km出ているとはいえ、普通です。もうこれで営業しちゃっていいじゃんという感じですね。

リニアの課題としてよく指摘されるのは採算性ですかね。大前御大からはボロクソ言われています。
リニアの料金は在来の新幹線並み(「のぞみ」の指定席料金+700円)に抑えるという。つまりは総工費5兆円の回収の目途は立っていないわけで、結局は政治力を使って資金を補てんしてもらったり、税金を優遇してもらうしかないのだろう。
リニア中央新幹線「9兆円プロジェクト」の採算
- プレジデント -


大前先生のご指摘もわからなくはないんですが、ちょっと根拠が薄弱なんですよね。

例えば、「リニアはトンネルばかりで旅情がない」といいますが、東海道新幹線の利用者の7割は出張や単身赴任などのビジネス客ですから、旅情もへったくれもないでしょう。彼らにとっては、景色が見えるかどうかよりも車内でWi-Fiが繋がることの方がずっと重要です。

また、「大深度地下の品川駅や名古屋駅での乗り換えに時間がかかり、新幹線と比べて時間短縮のメリットが少ない」という指摘もあります。これも新聞報道などで指摘されています。

確かに名古屋を目的地と考えるとそうかもしれません。しかし、大阪まで行くことを考えるとどうでしょう。

2027年に品川〜名古屋間が開通すると同区間は40分で結ばれます。東海道新幹線の名古屋〜新大阪間が現在50分ですから、乗車時間は合わせて1時間30分。名古屋駅での乗り換えに15分かかったとして、1時間45分。現在の新幹線の2時間20分より35分速く着くことができます。

乗り換えの手間というデメリットはありますが、30分以上短縮できるのならば、そちらを選ぶビジネス客は多いのではないでしょうか。

また、現在でも東京〜大阪間は新幹線の利用者85%に対して航空機は15%程度ですから、より速く到着できるのであれば、シェアの増加が見込めます。

このあたりは、JR東海がどれだけリニアが便利と感じられる運行ができるかにかかっているかもしれません。リニアが開業すれば、東海道新幹線の「のぞみ」は本数が減るでしょうし、乗り換えの容易さなどの工夫はいろいろとできるかと思います。

まあともかくここまで作っちゃってるし、2027年には否が応でも開業するわけですから、あとは売上の最大化と経費を最小化に尽くして収益を上げるしかありません。

さてこの超電導リニア、1962年に研究開発がスタートして今年で54年、開業まで65年を要するという超超巨大プロジェクトなわけですが、これまで直接間接を含めて一体何人の人が携わってきたのでしょうか。

車両を開発する人、軌道を開発する人、運行管理システムや保安システムを開発する人、軌道の用地を確保する人、トンネルを掘削して駅舎を建設する人、ダイヤを設計する人に資金調達する人・・・

リニア開発の中心にいながらも、開業を待たずに一線を退いたりこの世を去った人も決して少なくはなかったはずです。

そのような先人達の数えきれない膨大な思念や労力の結晶が超電導リニアであり、移動時間が大幅に短縮して自分が使える時間が増えるのは、誰でもない先人達のおかげなのです。

2027年にリニアが開業して乗車した暁には、手を合わせて感謝しながら乗るしかありませんね。
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ということで、2回に渡ってお届けした超電導リニアでしたが、次回は通常運転の車ネタ!!

になるかな・・・