みなさまこんにちは。

さて、既報の通り、この度21年近くに渡って乗り継いできたプジョーを降り、メルセデス・ベンツGLBに乗り換えることとなりました。

昨年9月の受注から6ヶ月、真新しいグレーのSUVがようやく納車され、わが愛車プジョー308SWは引き取られていきました。

「フランス車のある生活をとことん楽しむブログ」は今回が最終回です。みんカラ時代の2013年ごろから細々と続けてきましたが、ここでいったんの区切りとなります。フランス車はもう降りてしまいますし、ドイツ車の情報なんて、どこにでもいくらでも溢れていますからね。

最後のエントリーのテーマはもちろん我が愛車。2013年に購入して丸8年乗ったプジョー308SWを、あらゆる観点から総括してみます。

良いことも悪いことも、メディアやYouTuberのチョイ乗り試乗では分かり得ない、長く乗ったからこそ分かることがあるんですよ。プジョーファンの方にとってはかなり厳しい話をしますが、やはり私の本音を聞いておいて頂きたい。これも私のプジョーへの愛情の賜物と受け流して頂ければ幸いです。雑誌のように、デザインや走りなどの各項目を星1つから5つまで採点しました。それでは順番に見ていきましょう。

■エクステリア
1.コンセプトとプロポーション
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
2000年代前半、欧州を中心に「モノスペース」というミニバン的なプロポーションが流行りました。プジョーが2001年に発売した307SWでは、先代306ブレークよりも10cm近く背を高くし、コンパクトなCセグメントワゴンながら3列シートの7人乗りという独特なパッケージングを採用しました。

その307SWのプラットフォームとコンセプトを引き継ぎ、より現代的なデザインを与えられたのが、2007年に登場する初代プジョー308SW(T7)です。
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3列シートのためにルーフラインを後方に伸ばすと、ボディ形状はより四角くなり、デザイン面では不利になりますが、308SWではフロントからリアエンドまでなだらかに流れるような弧を描くことで、流麗なプロポーションを実現しました。

実用性や機能を確保しながらデザインを捨てることはない。カーデザインの王道であり、マスターピースと言っても過言ではありません。間違いなく5つ星です。

2.フロントマスク
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
初代プジョー308のデザインを理解する上で重要なのは、1998年に発売されたプジョー206です。206では、これまで205や406などで高い評価を得ていた外部デザイナーのピニンファリーナと決別。206の社内デザインチームは、釣り上がった猫の目のようなヘッドライトと口髭のような樹脂バンパー、大きく開いたアンダーグリルという個性的な表情を作り出しました。当時の基準で見てもお世辞にもカッコいいとはいえないながら、206は世界的に大ヒットを飛ばします。

しかし206の成功は、プジョーにとって「終わりの始まり」でした。206のデザインを踏襲した1007や207、407などは市場の評価を得られず、「わざと酷い車を作ろうとしているとしか思えない」と評されるほどにまで競争力は低下。プジョーは長い低迷に追い込まれ、倒産の淵に立たされるのです。

「誰もがカッコいい車を求めている」という当たり前の常識が、傾き始めた自動車会社では往々にして通用しなくなります。低迷期の最中に生まれた初代プジョー308も、206の流れを汲むワニのような顔つきでした。

しかし、2011年のフェイスリフトでは顔つきを一新。こうして生まれたのが308T7後期型の「フローティンググリル」です。
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フェイスリフトという制約下でも前期顔の面影がほとんどない、スッキリとした表情に生まれ変わりました。これが2014年の308や3008といったプジョー復活を支えたモデルにつながっていくわけです。そういう意味で星5つですね。

3.リアエンド
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
鋭い顔つきのフロントマスクとはうって変わって丸っこいお尻。このアンバランスがいいんですよ。Dピラーからリアコンビランプにかけて描くS字も絶妙です。フランス車はやはり後ろ姿です。
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■走行性能&ドライビング
1.エンジン&ギアボックス
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
308SWに搭載されるEP6型4気筒1.6リッター直噴ガソリンターボは、BMWと共同開発された別名プリンスエンジン。そのパフォーマンスや経済性が高く評価され、国際エンジン大賞など多くの受賞実績があります。このエンジンで特筆すべきはパワフルで清々しい中間加速。アイシン製6速ATとのマッチングも素晴らしく、まさに新世代のプジョーに相応しい、運転が楽しめるエンジンでした。

2.サスペンションと乗り心地
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
この時期のプジョーは「ドイツ車寄り」といわれていて、サスペンションは全体的に硬め。そのため低速域ではゴツゴツとした乗り味ですが、時速70kmを超えると俄然しなやかでフラットになります。高速道路では路面のうねりをしなやかにいなし、突き上げもピタッと収束させる絶妙な足さばき。荷物を満載した方が乗り心地がよくなるのもフレンチワゴンならでは。

3.ハンドリング
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
いまや当たり前の電動パワーステアリングですが、308T7では電動油圧式を採用していました。車庫入れなどの低速ではかなり重いですが、ひとたび走り出せば気になりません。油圧のじっとりとしたステアリングフィールは、交差点でもハンドル捌きの楽しさを味わうことができます。文句なしの星5つ。

■インテリア
1.ダッシュボード
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
シンプルでスッキリとしたダッシュボードには、4連アナログメーターに単色のMFD。コストダウンに徹して安っぽかった206から乗り換えた私からは、非常に立派に見えました。

2.見晴らし、パーキングセンサー
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
窓が大きいので見切りは問題ありません。センサー類は標準ではバックソナーだけで、これだと星4つというところですが、私はリアカメラを後付けしたので、星5つです。

3.カーナビ・インフォテイメント
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
カーナビは後付けのPanasonic CN-H510D。これといって特徴のない機種ですが、ルート案内は前車の206で使っていたソニー製ナビの方が優れていましたね。

エアコンは3連ダイヤル式。中央の大きなダイヤルで風量調節、左右の小さなダイヤルで温度調節ができます。現代のタッチパネルでは不可能なブラインド操作ができるところがポイント。
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4.品質
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
あー、えーと、んーー、品質?

■乗員と荷室空間
1.前席
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ここ20年ほどプジョーだけに乗っていた私には、試乗で乗った瞬間にしっくり来ました。シートはフランス車にしては少し硬めですが、長距離ドライブでも腰やお尻が痛くなることはありませんでした。操作系は過度に電子化されておらず、ダイヤル式のエアコンは操作性抜群。ゲート式のシフトレバーもお気に入りでした。

2.後席
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
この車の最大の価値は2列目といってもいいでしょう。3座独立式のシートにはチャイルドシートを2席置いても中央に大人が座ることができ、ジュニアシートも3席納まります。シートバックテーブルに巻上げ式サンシェードなどの家族持ちにはありがたい装備も抜かりありません。
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そして、天井のほぼ全面を占める広大なグラスルーフ。シェードを全開にして夜の高速道路を流していると、子供達が喜びます。さらに、日本の夏の暑さには、この車のような非透過式のルーフシェードが有り難いのです。
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3.荷室
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
3列目シートはカーゴスペースにむき出しになっていますが、個別に取り外しが可能です。それだけでなく、なんと2列目の3席も全て取り外すことができるので、その最大積載容量は1,736リットルを誇ります。座席の取り外しは大変ですが、これは星5つでは足りないほど。

3列目を2席着けていると荷物はあまり積めませんので、普段はは1つ外して6人乗りの状態にしていました。
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■維持費
1.価格、燃費、維持費
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
私が購入した時は、1年落ち走行距離2,000km弱で250万円でした。最近のプジョーは商品戦略の転換によって価格も上昇気味ですが、この時分はかなりお手頃でしたね。

歴代平均燃費は10.3km/L。カタログ燃費はJC08で11.4km/Lですので、私の都内週末ドライバーというプロファイルを考えれば優秀な方ではないでしょうか。

維持費もたいしてかかってません。フランス車の場合、国産車と違ってどうしても個体差によって左右されるケースがありますが、後述の通り、幸運なことに私は信頼性の高い個体に当たりましたので。

2.装備
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
今でいうADASの類はありません。速度固定式のクルーズコントロールすらついていません。便利機能としては、バックソナー、オートライト、オートワイパー、オートエアコンくらいでしょうか。2012年の欧州大衆車としては極めて一般的な装備だと思います。

3.信頼性
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
私の2012年式308SWは極めて信頼性が高く、99%の機能は正常でした。ステアリング、サスペンション、トランスミッション、カーナビ、ブレーキ、パワーウィンドウ、ライト、ウインカー、全てのドア、そしてサンバイザーにグローブボックス。例を挙げればキリがありませんが、どのパーツも完璧に機能しています。

あえて重箱の隅をつつくとするならば、完全にガス漏れしたエアコンと、度々警告を発するエンジンくらいです。この程度であれば、四捨五入で星5つとしても異論はないでしょう。

4.安全性・セキュリティ
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
8年間、事故も外出先での立往生もなく家族を安全に運んでくれました。バッテリー上がりも自宅の駐車場という親孝行者です。
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ということで、いかがでしたでしょうか。できる限り客観的に記したつもりですが、若干の所有者バイアスはご容赦ください。

いよいよプジョーとの別れの時が来ました。21年前から3台乗り続けたプジョーを降りることになるなんて、まだ実感が湧きません。その間に結婚し、3人の子どもが産まれ、何回か引っ越して家を買い、何回か転職しました。人生の半分近くをプジョーと過ごし、どこへ行くにもプジョーと一緒でした。私のカーライフの大半はプジョーで構成されています。まさにPeugeot, my life. だったのです。

20年ほど前に日産自動車の「モノより思い出」というCMがありました。私は公開当時から一貫してこのCMが嫌いでした。広告業界でどれほど評価されようが、私はいまでも史上最低最悪のクソだと思っています。

だって、モノづくりの当の本人が自分で言うなよって話ですからね。そりゃあ、個々の車の違いなんて些末な差ですよ。自動車にさほど関心がない人からみれば、必要な機能さえ満たして安全に移動できればそれでよくて、デザインや性能の細かな違いなんてどうだっていいんですよ。

そんなことは分かりきったことだけど、作り手が拘りに拘って拵えた他社製品との微小な差別化要因を、消費者も喜んで迷い、選んでいるという現実があるのです。そして、その各社の切磋琢磨の結果が技術や安全性の進歩であり、多様性であり、文化でもあるわけです。

多くの人にとって、車好きもそうでない人も含めて、車選びは自己表現の一部なんですよ。自己表現というのは、自分自身の存在に意味を見出すための活動です。

自分の存在の意味を、中身だけで捉えることはものすごく困難だから、外見や持ち物に頼るんです。悟りを開いたゴータマ・シッダールタでもない限り、そういった簡単な方法でしか自分を認められないわけですよ。

だから、多くの人は血眼になって商品を選ぶんです。AとBの違いはなにか。自分にとってほんとうにふさわしいのはどちらなのか。モノの違いを、細かな違いを買っているんです。モノこそが大切なんです。

モノづくりの会社で「モノより思い出」などという、自社の存在意義を根底から否定するようなクリエイティブがコピーライターから上がってきたら、本来は「お前モノづくり冒涜してんのかw」と笑殺されるべきものです。しかし、当時の日産ではそれがされなかった。おそらく、逆説的でシニカルなメッセージを受け入れてしまうような文化があったのでしょう。

結果は推して知るべし。歴史が証明しているんですよね。社長が「もっといいクルマを」と檄を飛ばして愚直にモノづくりに邁進したかつてのライバルに、取り返しがつかないほど完全に引き離されてしまいました。

当たり前じゃないですか。私のカーライフの体験や思い出は、決してプジョーでなければ味わえない、かけがえのないものだったんですよ。

私の拙いブログを読んで頂いた皆様、コメントを頂いた皆様、Twitterやみんカラで絡んで頂いた皆様、そしてフレンチフレンチ幕張でお会いした皆様。数々の思い出は、プジョーでなければ決して得られなかったのです。

だから、「モノこそ思い出」なんです。モノにこそ、魂や、精神や、思い出が宿るんです。その逆はありません。

プジョー、そしてフランス車、たくさんの思い出をありがとうございます。私のフランス車のある生活はこれで終わりですが、これからもフランス車に乗り続ける方々が、その魅力を発信し続けていただけることでしょう。

この素晴らしいフランス車界隈に、末席ながら身を置くことができて、本当に幸せでした。またどこかでお見かけすることがあれば、その際はどうぞよろしくお願いいたします。

ありがとうございました。

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