みなさまこんにちは。

さて、我が愛車メルセデス・ベンツGLB 200d、前回のレビューでは主に走りにフォーカスしましたが、今回はメルセデス自慢のADAS、運転支援システムに焦点をあててご紹介します。

私のGLBには「前方約250m、側方約40m、後方約80mを検知するレーダー、約90mの3D視を含む約500m前方をカバーするステレオカメラという最先端のセンサーシステム 」がついているそうで、運転支援機能として主なものだけで、下記のご覧の通りの装備が付いています。

1.アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)&アクティブステアリングアシスト 
2.アクティブレーンキーピングアシスト
3.アクティブレーンチェンジングアシスト
4.アクティブブラインドスポットアシスト(降車時警告機能付)
5.パークトロニック
6.緊急回避補助システム
7.リアクロストラフィックアラート
8.ドライブアウェイアシスト
9.アクティブブレーキアシスト(歩行者 / 飛び出し検知機能付)
10.アクティブエマージェンシーストップアシスト
11.渋滞時緊急ブレーキ
12.トラフィックサインアシスト
13.マルチビームLEDヘッドライト&アダプティブハイビームアシスト・プラス

何がなんだか分かりませんが、要するに、「自動再発進機能付き全車速対応アダプティブクルーズコントロール」「ステアリングアシスト(車線維持・車線変更・緊急回避)」「自動ブレーキ(前進・後退)」「車速警告」「自動駐車」「前車・対向車感応式自動ハイビーム」といった機能が備わっているわけです。

これでも分かりにくいですね。私もすべてのADAS機能を体験できているわけではありませんが、主にACCを中心に見ていきましょう。

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■一般道では課題の多いACC
GLBのACCには「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)&アクティブステアリングアシスト」という大変長い名前がつけられています。ステアリングアシストは約20万円弱のナビパッケージに付属するセットオプションなのですが、まさかこの車で純正ナビを付けない人はいないと思います。ほぼ100%付けるなら標準装備にすればいいんですけどね。

ACCはステアリング右側中央の「SET+/-」スイッチを上に押すか、右側のRESスイッチで起動します。設定速度はSETスイッチの軽押しで1km/h単位、深押しで10km/h単位で調整できます。
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GLBのステアリングスイッチ。妻「なにカチャカチャしてるの?」

左側の富士山のようなマークのスイッチで車間距離を4段階で調整します。上で車間が詰まり、下で開きます。ブレーキを踏んだりCNCL(キャンセル)ボタンを押すとACCは一時的に解除され、RESスイッチを押すと直前の設定速度で追従を再開します。

渋滞や信号待ちの停車では、停車から3秒以内(一般道)であれば自動的に再発進しますが、そういうケースはあまりありません。多くの場合は手動再発進になるため、アクセルを優しく踏むと、設定速度で追従を再開します。

ACCは機能の差はあれ、いまや軽自動車にも付いているので珍しくもないと思いますが、GLBでは、さらにステアリングアシストによって、左右方向にも前車に追従していきます。

さてメルセデス・ベンツGLBのACC、一般道で使用した感想としては、便利ではあるものの、まだまだ課題が多いなあと思いました。

というのも、減速時のブレーキのタイミングが遅くて強すぎるんですよね。幹線道路を流していて前方の赤信号で車が停止している時などは、前の車にかなり近づいてからググーッとブレーキがかかるので、正直「こえーよ」と思います。こんなタクシー乗りたくない。

また、前走車がいなくなると、前方が赤信号だろうが道幅が狭かろうが左右をバスや大型トラックに囲まれていようが、まるで夢中でボールを追いかける子犬のように設定速度まで猛ダッシュをかますので、「おい、落ち着けw」と思ってキャンセルしてしまうのです。 

運転ヘッタクソだなあと思うんですが、GLBはフットブレーキのタッチがもちもちしていて素晴らしいので、自分でブレーキを踏んで減速した方が気持ちいいんですよね。

これまで運転した限りでは誤作動はないし、自転車やスクーターもちゃんと認識するし、便利ではあるんですが、使えない状況も多いというのが正直な感想です。

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車両設定の「アシスト」で各種ADAS機能の設定が可能。レーンチェンジアシストはデフォルトではオフになっているようです。

■真価は高速で現れた。
ところが、一般道でのいまいちな印象は、高速道路に乗ると一変します。

GLBのACCによる高速道路での走行マナーは一般道とはうってかわって好印象。アクセルもブレーキも、できる限り「急」を避ける仕草で、前走車に追いついても急減速することなく、少し車間を詰めながら徐々に間合いを取っていきます。これはきれい。

車間距離設定を長めに取っていると、首都圏の高速道路ではすぐに他の車に割り込まれます。すると設定された車間距離を保つために車は減速するのですが、決して急制動はかかりません。

隣の車線から自分の前に車が移動してきた瞬間に、まるで割り込まれるのを予知していたかのように、落ち着いてスーッと車間を開けていくのです。すげえ、そこ見てたの?見てたんでしょ?

アクティブステアリングアシストによるレーンキープは、私の車両感覚からは少し左寄りな気はしますが、しっかりと車線をキープしてくれます。手離しはできませんし、コーナーでのステアリング操作は左右に小刻みに振る傾向がありますが、自動操舵を職人(自分)の手で微修正をかけながら曲がっていく感覚と思えば大した違和感もありません。

ウインカーを出さずに車線を跨ごうとすると、警告表示とともに、手のひらにドドッドドッという、ランブルストリップを踏んだようなリアルなフィードバックを感じます。

そして「高速道路上」「複数車線」「跨ぐ車線が点線」「時速80km以上」で作動する自動車線変更(アクティブレーンチェンジングアシスト)。作動条件を満たす状況でウインカーレバーを軽押しすると、メーターに「右(左)に車線変更」と表示され、スーッと滑らかに進路を変更します。車線変更が完了するとウインカーの点滅も自動的に止まります。

何これすごい。

それでは、隣に車両がいる状況で自動車線変更を試みるとどうなるのでしょう。もちろん危険な状況を起こすわけにはいきませんので、自分は走行車線を走り、後続車が私を追い越して横に並んだ瞬間に、ウインカーを軽押ししてみます。ステアリングはもちろん両手で軽く保持したまま。

すると、ウインカーが点滅しながら車線変更の準備に入りますが、追越車線にまだ車がいるので、進路変更せずにいったんウインカーが止まります。そして、追い越した車との距離が十分に離れると、再びウインカーが点滅して車線変更を開始するのです。

僕「うぉーっ!」

妻「なになに!?どしたの!?」

思わず声が出てしまいました。運転手の私はどこからどこまでが自動制御なのかをもちろん把握しているのですが、同乗者には区別がつきません。

すごい。すごすぎるよこれは…

そして、渋滞が始まりました。全長5kmに及ぶ事故渋滞。高速道路では、GLBのACCの自動再発進機能は30秒まで延長されるので、ノロノロ運転ではアクセルもブレーキもほとんど踏む必要はありません。

そしてステアリングアシストも効いていて前の車にピタッとついていくのですが、通常時にはステアリングを動かしていないと「手離し」と認識されて頻繁に警告を発するトルク感応式のステアリング保持センサーが、なんと時速10km以下では作動しないようなのです。

つまり、高速道路上の時速10km以下のノロノロ渋滞では、ノーペダルでハンズオフというほぼ自動運転が実現するのです。そんなことカタログに書いてありましたっけ?

もちろんレベル2ですので、何が起きてもいいように常に手も足も備えておかなければいけません。停止状態が30秒以上続けばACCは解除されるし、流れが時速10kmを超えるとすぐに「おいこらハンドル持てよ」と警告がビカビカ出てしまいます。いやあそれでもすごいなあ。

車線規制が敷かれた事故現場を通り過ぎると、再びACCが本領を発揮します。コーナー手前で自動減速する機能はないので、間違ってもポルシェやフェラーリを追従してはいけません。しかし、自分よりも少しだけペースの遅い車についていけば、コースアウトする心配はまずありません。

直線や緩やかなコーナーが続く道路でACCに身を委ねていると、ステアリングを握り右足をペダルの上に乗せていながらも、自分が機械を操っているのか、それとも機械が自分を操っているのか、その境界がぼんやりと曖昧になってくるような気がします。

繰り返しますが、レベル2運転支援の環境では、運転の主体はあくまでも人間であり、機械は人間に従属しているだけです。運転の責任は100%自分にあります。しかし、車両の前後左右を監視するカメラやレーダーは、確実に私が見えないところも見通していて、私が眠気に襲われていようと同乗者との会話に気を取られていようと、運転手の感情の起伏も一切お構いなしに、常にその持てる能力を100%発揮してくれる存在なのです。

この安心感たるや、私の車にも「スターウォーズ」のXウイングに同乗するR2-D2や、「ナイトライダー」のK.I.T.T.のような、頼れるバディ(仲間)が乗っているような気になってきます。

その一方で、この先進運転支援機能は、運転がそれほど好きではない人には辛いものがあります。なぜならば、現時点では、従来のハンドルとアクセル・ブレーキに加えて、親指による速度や車間の設定という操作系統が増えたという状況であり、それは運転の複雑化に他なりません。いかに安全性が向上するとはいえ、「なにそれめんどくせえよ」と言われてしまえばそれまでなのです。

ドライバーが機能の作動ロジックや限界をよく理解して使いこなさなければ費用対効果を十分に享受することができないと意味では、まだまだ万人に向けたものとは言い難いのかもしれません。

それでも、GLBのADASをフルに経験すると、子供の頃にSF映画でみた、人間とロボットが共生する時代の入口に自分も片足を突っ込んでいることを実感するのです。一度経験してしまうともう手離せません。いや、手離しなんですけど、手離せないんですよ。

それに引き換え、鳴り物入りで登場したAI搭載対話型インフォテイメントシステム「MBUX」がなかなかのポンコツ具合を見せつけてくれていて、とても同一車両とは思えなくなります。おもしろネタを提供してくれるという点ではありがたいのですが、それはまた別の機会に。