みなさまこんにちは。

さて、2021年のゴールデンウィークはみなさまいかがお過ごしでしたでしょうか。

昨年のゴールデンウィークは、新型コロナウイルス第1回緊急事態宣言によってレジャー予約の多くがキャンセルされ、JR各社の予約席数は軒並み前年比1割、高速道路も3割という状況で、我が家もどこにも行かず、家でスターウォーズ1〜6を観まくっていたのでした。

それでもあの頃は、東京の新規感染者数はピークでも1日200人ほどで、なんとも長閑な時代でしたねえ。

コロナイヤー2年目の2021年にあってもいまだ感染拡大の勢いは止まらず、mRNAワクチンの全国民への接種による集団免疫の獲得によってしか抑止できないことが分かってきましたが、幸か不幸か既往症のない健康優良おっさんである私は、いつになったら打てるのでしょうか。

そんなゴールデンウィーク、第3回緊急事態宣言によって県を跨ぐ移動の自粛が求められておりましたので、東京都民である我が家も都内の各所を巡ったわけですが…


という冗談はこのくらいにして、自家用車で家族だけで旅行する分にはさして感染リスクも高くないだろうと判断し、できるだけ人出の少なそうな場所を目指したのです。

それが今回の、東京から山形、新潟、群馬を3泊で巡るおよそ1,200kmの旅です。

我が愛車メルセデス・ベンツGLB 200dが納車されてから1ヶ月、主に首都圏の高速道路などを走り、充実した運転支援機能に大変感心していました。


今回の旅では、高速道路から田舎の3桁国道、果ては峠道までの多種多様な環境でGLBのADAS(Advanced Driver Assistance System : 先進運転支援システム)をフル活用することができたのですが、これがもう期待を大きく上回る結果でした。

私が言いたいことはこのツイートに凝縮されているのですが、もし私がいま、人からどの車を買ったらいいかを相談されたら、迷うことなくこう答えます。

「メルセデスか、メルセデスと同等以上のADAS機能がついた車を買いましょう。それ以外の要素はお好みで。もし気に入った車に現在のメルセデスと同等以上のADASがついていなかったら、年次改良で装備されるまで待つか、他の車にしましょう。それでも選択肢がなければ、購入自体をやめて2〜3年様子を見ましょう」と。

メーカーはどこでもいいのです。メルセデスだろうがBMWだろうがアウディだろうが、フランス車だろうが国産車だろうが、なんでもいいのです。レベル2完備であれば。

「お前、ついこの間まで『フランス車をとことん楽しむ』とか言ってたじゃねえかこのやろう」と思われるかもしれません。

それはそうなのですが、すでに時代は別の領域に入ってしまっていたのです。それは、自動車の運転手が「ドライバー」から「スーパーバイザー」に変化する時です。先のツイートで「ドライブの概念が覆された」と述べたのはこのことです。

スーパーバイザーは、日本語では「監督者」などと訳されます。現場スタッフの作業をつぶさに見守り、スタッフが処理できない事案が発生した時に、代わりに判断を下す現場レベルの上位職です。

分かりやすい例は企業のコールセンターです。顧客との通常対応はオペレーターが担い、クレームなどで「おい責任者出せよ」と言われて初めて出てきて対応するのが、スーパーバイザーですね。

自動車の運転においては、ACCによる加減速制御に、ステアリングアシストによる操舵支援機能が加わったことにより、一定の条件下における自動運転が可能になりました。

運行責任が運転手にあることは従来と変わらないものの、基本的な運転動作は機械が担っていて、運転手は急な割り込みや車線変更の判断をするという意味で、運転の監督者、すなわち「スーパーバイザー」になっているのです。

メルセデス・ベンツGLBのADAS機能をフル活用すると、高速道路では基本的な走る、曲がる、止まるといった運転動作からは、ほぼ解放されます。

もちろん手動運転が必要な領域もまだまだ少なくありませんが、環境によっては「あれ、俺いま何もしてないじゃん?」という感覚になることが多く、そして圧倒的に疲れません。今回、旅の初日は東京から山形まで約450km移動しましたが、はっきり言って楽勝です。

前車プジョー308SW(T7)と比べると、GLBはプラットフォームが2段階くらいレベルアップしているのですが、もともと軟弱者で、さらにもう若くもない私にとっては、以前では考えられないことでした。

もちろん、ADASなんか無くても1日500〜600kmは平気で走れるという人もいると思います。そういう人は、1,000km、いや3,000kmくらい余裕で走れるようになれるでしょう。

メルセデスのウェブサイトには「メルセデスのインテリジェントドライブは、あなたのドライブの快適性と安全性を劇的に進化させます。」と記載されていますが、ここに関してはまったくその通り、看板に偽り無しです。

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じゃあ、どこがどうすごいのか?と思っても、ADAS機能ってカタログで読んで比較しても、何がどこまでできるのかよく分からないんですよね。メーカー自身が「劇的に進化」と謳う一方で「単なる運転支援に過ぎません」とか書いてあったりするのです。おいどっちだよ。

ということで、なんのしがらみもなく好きなことを好きなだけ書けるGLBオーナーの私が、「GLB(=他の多くの現行メルセデス車に共通)のADASはここまでできるよ」ということを詳細に記すことで、「ふーん、ここまでできるんだあ」と思って頂ければ幸いです。

■高速道路「もうお前の出る幕やないで」
さて、今回の旅では、都市部と田舎の高速道路から一般道、ワインディングと幅広いシーンを走行し、大雨や強風の悪天候にも遭遇しました。

やはりADASが最も大きな効果を発揮するのは高速道路です。今回のルートでいえば、制限時速100kmの東北道や関越道、制限速度80kmの山形道などです。
運転手の出番がなくなる高速道路。基本的に「座って見てるだけ」です。

一般道からインターチェンジを通過して、本線に合流したらステアリング右側のスイッチでACCを起動します。真ん中の「+」スイッチでは走行中の速度に設定されますが、制限速度が認識されている状態で右側の「RES/📍」マークのスイッチを上に押すと、ACCが制限速度に設定されます。

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高速道路では、ACCを制限速度+10km/h程度までの範囲で設定していれば、カーブでオーバースピードになることはまずありません。

時速60kmを超えるとレーンキープアシスト(LKA)が有効になります。私はメーター中央にADASを表示していますが、LKAが起動すると車アイコンの両側の線が緑色に変わり、車線を認識していることを分かりやすく教えてくれます。

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GLBのLKAの車線維持性能は、完全なオンザレールとまでは言えませんが、まずまず中央付近を維持してくれます。

特に、片側1車線の自動車専用道路でラバーポールが立ち並んでいる場所などは、あの赤いポールをなぎ倒す心配がなくなるので圧倒的に楽チンです。

気休めにもならないラバーポール。重大事故が多発しているそうです。

LKAに守られているとはいえ、側壁とラバーポールに挟まれたトンネル内で手を放す気にはなれませんが、掌の中でクイクイとハンドルが切れるのは、車が生きているみたいで面白いですね。

なお、ステアリングの回転トルクを検知できない状態が15秒ほど続くと、メーター中央に手放しの警告が表示されます。その状態がさらに数秒続くと、「ドンディン」というアラート音がなります。その先は分かりません。説明書によると「自動的に減速し、停止する」とのことです。

多くの方が指摘していますが、この回転トルク検知式の手放し警告は、ハンドルに手を添えて直進していても発報されてしまうので、かなり鬱陶しいですね。握っていること自体を検出する静電容量センサーだと有り難いのですが、まだまだ少数派のようです。

ちょいちょいとハンドルを動かして手放し警告を回避し続けながらも、高速道路上ではほぼやることはありません。(追記:この時は知らなかったけど、ステアリングホイールの小さなタッチパッドに触れても警告解除されます。いまはこれがメイン。親指でずっとパッドに触れ続けていれば警告は出ないけど、それはそれで親指が疲れます。)

遅い先行車両に追いついたら、時速80km以上であればアクティブレーンチェンジが作動するので、ウインカーを出すだけで、センサーが前後の車両の存在を確認し、安全が確保できれば自動操舵で上手に車線変更してくれます。

大雨に見舞われた時は自動車線変更の途中で「車線変更を中止」という表示が出たことがありましたが、手を添えていれば問題ありません。

次に渋滞です。GLBのACCは、渋滞時には停止から30秒以内に前走車が発進すれば、自車も自動で再発進します。低速でも先行車を認識したステアリングアシストが効き、時速10km未満では手放し警告も出ないので、ノロノロ渋滞ではハンズオフ&ペダルオフが可能です。

自動再発進を待機している時は、ACCの緑の車マークがゆっくり点滅しています。この状態で前走車が発進すると自動再発進になります。

自動再発進の時間は、公式には「一般道で3秒、高速道路で30秒」とされていますが、どうもACCの設定が70km/h以上で30秒になるようです。(追記:間違い。販売店レベルでは「高速道路で30秒」などという説明がありますが、正確には「車両が複数車線を認識している場合は30秒、その他の場合は3秒」です。)ただ、この「最大30秒」というのがあまりあてにならず、高速道路の渋滞でもたびたび再発進しなくなります。その時はアクセルを軽く踏んで再発進します。

なお、今年のゴールデンウィーク前半の東日本は天気が悪く、強風や大雨に見舞われましたが、ADAS機能にまったく不安はありません。ACCやLKAについては、誤認識や誤作動と思われるケースは皆無でした。

高速道路では、完全手動運転が必要なのはインターチェンジやPAの出入りくらいで、本線上ではほとんど運転手としての出番はありません。要所要所で手を下すだけ。まさに監視役、スーパーバイザー状態です。

■一般道でも、郊外に行けば行くほど使える
さて、高速道路を降りて地方の幹線道路ではどうでしょう。片側1車線から2車線で50〜70km/h程度の流れです。

山形県内の国道7号線。前走車が枯葉マークの軽自動車でも、ACCで追従してると気になりません。

GLBのACCは当然全車速対応ですが、60km/h以上であれば高速道路と同様にレーンキープアシストが効き、車線維持性能はグッと高まります。

車線認識は優れもので、ラインがかなりかすれて見えにくくなっていても認識します。「車線が不明瞭な場合はガードレールなどを認識して走行する」ということですが、車線以外の物を認識しているかどうかは表示されないため、分かりません。

一般道では高速道路ほどADASにお任せはできません。前走車がいなければ赤信号では止まれないし、ACCを制限速度に設定していても、一般道には制限速度でも曲がれないコーナーがあります。交差点も自動操舵では曲がれないので、やはりドライバーとしての関与度合いはそこそこあります。

ただ、これは今回の旅行で初めて気づいたのですが、GLBは、前走車がいない状態でACCで定速走行している時、時速60km以下でLKAが作動していなくても、ステアリングアシストが作動して車線を維持しようとするんですよ。

これはちょっと驚きました。ウェブサイトのACCの説明の「前走車との最適な距離を維持しながら車線もキープします。アクティブステアリングアシスト作動速度範囲:0~約210km/h」という表記のことのようです。

新潟県内の国道354号線。私が通った時は激しい風雨で、波しぶきが車にかかるほど。晴れてたら絶景なのね…

前走車は不在で、メーター内の車線マークも表示されないので、てっきりステアリングアシストは動かないのかと思いましたが、クイクイと操舵支援が効いています。都内ではこのようなシーンがないので気づきませんでしたが、郊外の道路をゆったり走るには非常に心強いですね。

ただし、時速60km以下のステアリングアシストはかなりマイルドで、手動で介入しないと車線からはみ出しそうになりますし、車線を跨いでも警告されないため、注意が必要です。

一般道で運転支援がまったく使えない、100%手動運転になるのは、住宅地などの路地や、曲がりくねった峠道です。ここまで自動走行を実現しようとすると、レベル2でもカーブ手前での減速や赤信号での自動停止、交差点の右左折、狭い道路での対向車とのすれ違い、歩行者や自転車のやり過ごしなど、現在とは桁違いのシナリオの制御が必要になりそうです。

弥彦山スカイライン。予想通りではありましたが、運転支援機能はまったく役に立ちません。

車載レーダーやカメラだけでどこまで高度な制御ができるようになるのかは分かりませんが、日本ではダイナミックマップ基盤社が2023年から、高速道路に加えて一般道の高精細3Dマップの整備を始めるということです。あと5〜6年もしたら、一般道でのレベル2〜3水準の自動運転機能も実装されてくるのかもしれませんね。

■すごいのはベンツだけじゃない
さて、ここまで我がメルセデス・ベンツGLBのADAS機能について説明してきましたが、これが市販車の最高峰というわけでは全然なく、ホンダ・レジェンドのレベル3はもちろん、高精度3D地図を搭載するトヨタミライやスバルのアイサイトXにはおそらく及びません。

そして、他メーカーにも同等もしくはそれ以上と思われる機能が搭載されています。BMWには、「ステアリング&レーンコントロールアシスト」、フォルクスワーゲンは「トラベル・アシスト」、プジョーは「レーンポジショニングアシスト」などです。

BMWやアウディ、フォルクスワーゲンなどのドイツ勢は一部のモデルにアクティブステアアシストが装備されていますが、これも数年内にほぼ標準装備になるのでしょう。

メルセデスは、一番下のAクラスからほぼ全てのモデルでアクティブステアリングアシストが事実上標準装備(ただしGクラスを除く)されます。このレンジの広さはなかなかですね。

しかし、もっとすごいのがトヨタです。信じられないかもしれませんが、エントリーモデルのヤリスにも全車速対応ACCとLTA「レーントレーシングアシスト」が標準装備されるのです。冒頭のツイートでは「Cセグ以上を買うなら」と言いましたが、いまや200万円以下の国産Bセグ車でも、レベル2完備と言っても過言ではない装備が手に入るんですよ。ご覧くださいこのラインアップ!

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トヨタのLKAフルラインナップ。主要車種でここにないのは、ノア/ヴォクシーくらい?

いやー、性能や使い勝手は知りませんが、たまげましたね。国内シェア5割のトヨタが主要車種のほとんどに高度運転支援機能をバンバン搭載させていることを考えると、高速道路の風景はみるみるうちに変わっていきますね。

■自動運転社会はつまらない?
ということで、完全自動運転車の実現はまだまだ先の話というのは紛れもない事実ですが、実はレベル2装着車の普及は粛々とかつ着実に、ものすごいスピードで進んでいます。高速道路で手動運転が禁止される日が訪れるのも、そう遠くはないのかもしれません。

職場にパソコンがなかった時代に人々がどうやって仕事をしていたのかいまや想像できないように、人々が自らの手足を使って運転していたことが信じられなくなる時代が、確実に訪れますね。

それは、運転の自由が制限され、楽しみが奪われるつまらない未来でしょうか?

私もクルマ好きの端くれなので、ステアリングを握りアクセルを踏み込むことの楽しさは心得ていますし、その楽しさが失われつつあることは残念です。

しかし、それも流れゆく時代のうねりの中で起こる小さな渦のようなものに過ぎないのかもしれません。それに、数十年後に「また、高齢者の無謀な手動運転による事故が起きました。」などと老害っぷりを晒すことのないように、新しい時代に見合った仕草を身につけることも、大人の責任の一つなのだと思います。

それに、失うことばかりではありません。

私が結婚する前に楽しみにしていたのは、奥さんと2人で運転を交代しながら、国内外のあらゆる場所をドライブすることでした。残念ながら、私の妻は運転が好きではなく、ハンドルを握らなくなってもう10年以上経ってしまいました。これからも自分で運転することはなさそうです。

しかし、GLBのレベル2運転支援機能によって1日500kmの移動も難なくこなすことができ、図らずもその夢が実現したのです。技術が人間の可能性や限界を押し広げる。それはそれで楽しい未来だと思いませんか。

ということで、レベル2高度運転支援車が普及することで、自動運転社会の到来に必要とされる社会受容性の高まりにも関わってくると思いますので、車の購入を考えている方は、パワートレインやデザインや燃費という視点だけではなく、いかに先進機能を味わうかという側面で検討してみても、面白いのではないかなあと思います。